国語で道徳を教えるな「国語よ、ロックであれ」 ブレイディみかこ×新井紀子「国語」を語る

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新井:学童保育のほかにも、NPOの「子ども食堂」とか、いろいろな活動がありますよね。私はそういうのをもっと一体型にして、学童保育とか子ども食堂とか無料塾とか放課後の補習授業とか、全部合わせてちゃんとしたNPOに外部委託するような制度を作って、そういう中で、子ども達にしてやれることを考えてもらえるといいなと思っています。

ブレイディ:先ほど図書館が潰れているという話をしましたけど、イギリスでは図書館とかが夕方の時間帯を子どもに開放して、みんなが集まって宿題できるようにしたりしていました。ボランティアで近所の大学生なんかが教えに来たりしていたんです。

そういう場所をなくしてしまうと、家庭教師を雇える裕福な家庭の子どもと、貧しい地域の子どもの格差は広がってしまいます。そうなると、経済も悪くなってしまうってことが、全然、わかってないんです。

長期的なスパンで社会を変えようと思ったら、おっしゃるとおり、教育だなと私も思ってきました。うちなんか、父は肉体労働者だし母は高校もまともに出ていないのに、私が地元で有名な公立進学校に行ったので、周囲は驚いていましたけど、ご著書を読ませていただいて、それはやっぱり読めたからだと思ったんです。

見当違いの大学の無償化

新井:読めたら、別に大学に行かなくたって、ブレイディさんみたいになれるって話ですね。

新井紀子(あらいのりこ):数学者。国立情報学研究所教授、同社会共有知研究センター長。一般社団法人「教育のための科学研究所」代表理事・所長。東京都出身。一橋大学法学部およびイリノイ大学数学科卒業、イリノイ大学5年一貫制大学院を経て、東京工業大学より博士(理学)を取得。専門は数理論理学。2011年より人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクタを務める。2016年より読解力を診断する「リーディングスキルテスト」の研究開発を主導。主著に『数学は言葉』(東京図書)、『コンピュータが仕事を奪う』(日本経済新聞出版社)、『ロボットは東大に入れるか』(新曜社)、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)などがある(撮影:尾形文繁)

ブレイディ:いや、そんなたいしたものにはなってないですけれども。あっちこっち寄り道したので、随分時間はかかりましたし。

新井:だから、中学校を卒業するまでに全員が読めるようになる教育にしないといけないと、私は言ってるんですが、大学の無償化みたいな話になっています。そんなことしたらとんでもないおカネがかかります。国立大学の無償化なら話はわかります。

でも、例えば、慶應義塾大学を無償化する必要があるでしょうか。大学無償化が、増えすぎて定員割れしている私学の延命に使われてはいけないと思います。

必要なのは大学無償化より、本当はゼロ歳からの全員保育園ですよ。そう言ったら、リベラルを自称する政治家が、「やっぱり3歳まではお母さんが育てたほうがいい」って。

ブレイディ:何かそういうファンタジーがあるんですよ。

新井:私は、年収200万未満でシングルマザーしている23歳の母親に、「3歳まではお母さんの手元で育てましょう」なんて言えますかって言ったんです。

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