働き盛りでがんと生きる42歳男性の「幸福論」 長男誕生、転職というタイミングでの再発

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関さんの場合、ステージ4のすい臓がんで働くとなると、前述にあった体調が前提だ。ただ、抗がん剤投与後の3年間、病状はずっと安定していた。その分、「(再発に)ただただ、茫然としました」と、関さんは短い言葉で振り返った。

気になるのが転職先の反応だった。再発を知らされた直後に、関さんは上司に電話を入れ、「(がんの再発を確定する)検査入院になったので週明けに連絡します」と、きちんと伝えた。

「上司には『ゆっくり休めばいいよ』と、穏やかな声で言われました。その会社には前職にはなかった傷病制度があり、半年ほど欠勤状態で顔を合わせていない上司や先輩もいました。そんな配慮がある会社でした」(関さん)

関さんは現在、仕事を続けながら、新たな抗がん剤治療を受けている。今はがんが再発しても2週間程度の入院で済み、後は従来の通院治療という時代。その分、がん患者の存在や悩みが見えづらい面がある。

妻への感謝の表し方とセカンドオピニオン 

がん再発後、関さんが妻の勧めで始めたことがある。妻や友人が紹介するすい臓がんの専門医に2カ月に1度通い、栄養相談のセカンドオピニオンをもらうようになった。

結婚記念日には挙式会場で、夫婦で記念撮影(写真:関さん提供)

その医師は、糖質摂取を制限する食事療法の専門家でもある。がん細胞が糖質を好んで摂取するために、その食事療法に注目する人たちがいると、関さんは話す。

「嫁が再発後の私の体調を心配してくれているので、その気持ちには配慮しなきゃいけないな、と思いました。日常生活はもちろん、がん治療も、子育ても、協力し合っていく大切なパートナーですから」

1回目のがんは、関さんより先に妻のほうが当時の担当医から知らされた。それにもかかわらず、関さんが知るまで、そんな素振りひとつ見せなかった女性だ。

「栄養相談の先生は、すい臓がんの専門医なので、私の現在の治療方針などが適切かどうかも確認できます。ですから、妻の提案に従ってよかったと思います。でも、私は栄養相談だけで、食事療法はやってません」(関さん)

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