働き盛りでがんと生きる42歳男性の「幸福論」 長男誕生、転職というタイミングでの再発

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何よりも複数の医師の目で、現在の治療内容をチェックしてもらえる安心感は関さんの想像以上で、セカンドオピニオンは患者に必要だと考えるまでになった。

主治医にもその医師のことは伝達済み。決していい顔はしなかったが、関さんは妻への配慮を優先した。2人の幼い子どもを育てながら、自分以上につらく不安な日々を過ごしている妻への、彼なりの感謝の表し方でもある。 

長女に心ない言葉を浴びせる同級生たち

がん再発後、関さん一家はテレビに出演した。関さんが当時小学3年生の長女に、1冊の絵本を読み聞かせながら、がんについて伝えている様子が、朝の情報番組で全国放送された。がん再発の翌年、2018年末の話だ。

絵本とは、がん治療中の母娘のユーモラスな会話を軸に描かれた『ママのバレッタ』。朝の番組だったせいか、長女の同級生たちにも一気に知られ、長女は教室で注目の的になり、つかの間喜んでいたという。だが、一部の同級生からは心ない言葉も浴びせられた。

「おまえも、がんなのか?」

「おまえも死んじゃうの?」

そんな質問に、関さんの長女は当然答えられずに戸惑った。

興味本位な質問をした子の家庭で、先の放送を観ながら、どんな会話がかわされたのかはわからない。テレビ番組を観たかどうかさえ不明だ。いずれにせよ、「がん=死」という先入観が強い社会が背景にある。

関さんの妻は、彼の病気について長女の担任や一部のママ友には伝えていたが、当然知らないママ友や同級生もたくさんいた。

「担任の先生には、放送後に妻が連絡して、放送内容を録画したDVDを渡しました。先生もそれを観て学級会を開いてくれて、相手を傷つけるようなことは言わないようにと、注意してくれたようです」(関さん)

25年のキャリアを持つ、がん専門医の押川勝太郎(54歳)は、「がんの悩みの8割は人間関係」だと指摘する。

「がんの治療方法は、その部位やステージによって決まってきます。ですが、病気について、誰に、どこまで話すのかは個人の考え方次第。対家族や対会社、対学校や対地域など悩みはつきません」

そもそも、誰に、どこまで、伝えればいいのかと、主治医に助言を求める発想がない患者が多く、1人孤独に悩んでしまうことも多いと押川医師は話す。一方で、残念ながら、治療以外は自分の専門外と考える医師もいて、相談しても失望してしまう現実もあると続けた。

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