週刊東洋経済 最新号を読む(5/16号)
東洋経済オンラインとは
ライフ #働き盛りでがんになった人たちの行動

働き盛りでがんと生きる42歳男性の「幸福論」 長男誕生、転職というタイミングでの再発

8分で読める
2/4 PAGES
3/4 PAGES
4/4 PAGES

がんと診断されて初めて、本人と家族は「誰に、どう伝えるか」問題に直面する。「がん=死」という先入観が、相手からさまざまな反応を引き出す。社会と関わる範囲が広い分、子育て世代の悩みはより大きくなる。

国立がん研究センターの最新統計(2019年8月8日更新)によると、がん患者の5年生存率は男女合計で66%を超え、その部位やステージによっては、「付き合っていく病気」になっているのに、だ。

関さんの妻は先の1件もあり、子どもへの影響を考え、取材には消極的だ。しかし、関さん自身の気持ちは少し違っていた。

がんになったからこそできること

テレビの取材依頼を受けた理由について、関さんはこう説明した。

「絵本の読み聞かせなら、まだ幼い長女にも病気について伝えられると思いました。それに普通に生活していても、誰にでもこういうことが起こりうるんだ、と社会に伝えたい気持ちもありましたね」

それに会社員が普通に暮らしていたら、家族でテレビに出る機会なんてないでしょう、と続けた。

「長女や、まだ記憶には残らないだろう長男にも、『自分の父親って、こんなことをやっていたんだ』と将来伝えられるのなら、家族とのテレビ映像を遺しておきたい、という気持ちもありました。だから僕の名前が、その画面に表示されていることが重要でした。僕のエゴなんですけどね……」

がんと生きる父親の本音を少し伏し目がちに、関さんは率直に口にした。

実名と顔出しで取材を受けたり、人前で話したりする機会も増えた。一会社員ならできない経験を積めている、と関さんはうれしそうに語る。

「取材を受けることで、責任も生まれます。社会に対して発言できる自分になることで、もっと生きていたいという意欲も湧いてくる。一連の活動が、私が前向きに生きていくための、モチベーションにもなっています」

坊主頭に紺色のニット帽をかぶった関さんはそう言うと、口角をきれいに上げてみせた。当事者として働くことと、家族を思いやること。社会に発言することと、父親として生きた証しを遺すこと。

いずれも関さんにとっては、がんになったからこそできることだ。

(=文中敬称略=)

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象