法的に見るドトール「休日119日固定」のマズさ 不利益変更は1人ひとりの同意が必要だが…
前ページのとおりであれば、確かに、労働基準法の定めに沿った就業規則改定の手順を踏んでおり、ドトールコーヒーの「法にのっとり適切に改正対応を行っている」という見解には正当性が認められそうです。
ところが、続いて、「従業員1人ひとりから、就業規則変更を受け入れる旨の同意は得ましたか?」という質問をしたところ、雲行きが怪しくなりました。
1人ひとりの同意が必要?
質問の背景には、労働契約法第9条があります。
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
労働契約法は、労働基準法ほど知名度はありませんが、労働契約は労使の対等な合意によって成立するものであるという考え方に基づき、使用者が一方的に労働条件を引き下げたり、労働契約を打ち切ったりすることから労働者を守ることを目的として2008(平成20)年3月1日から施行されている重要な法律です。
労働契約法は、労働者個人の権利を守るための法律なので、同法第9条の「合意」は、労働者代表との包括的な合意ではなく、労働者1人ひとりとの合意を意味しています。
すなわち、労働基準法だけを見ると、就業規則の変更は労働者代表の意見さえ聞けば会社がいかようにも変更できると読めてしまいます。ですが、労働者の権利を奪ったり、労働者の待遇を引き下げたりするような就業規則の改定を行う場合には、原則として、労働者は1人ひとりから個別同意を得る必要があるということです。
同社の広報担当者は、上述の「1人ひとりからの同意」の質問に対しては、「わかりかねます」という回答でした。
そこで、「(広報担当者)あなた自身は、会社から年間休日数を119日に固定することに対して、同意書にサインをするなど、何らかの個別同意をした記憶はありますか?」と問いかけたところ、「その記憶はない」ということでした。
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