法的に見るドトール「休日119日固定」のマズさ 不利益変更は1人ひとりの同意が必要だが…

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これに対し、従業員側が「合理性がない」と考えたとしても、会社側にそのことを認めさせるには、最終的には裁判を行わなければなりません。そのこと自体ハードルが高いですし、仮に裁判に勝訴したとしても、得られるものは「数日の休日が復活する」ということのみなので、裁判に費やすエネルギーや弁護士費用のほうが高くついてしまいます。

そのため、労働者の同意を得ない就業規則の不利益変更について、生活基盤が破壊されるような大幅な不利益変更に対しては裁判などで戦うしかありませんが、一般的に小幅な不利益変更の場合は、現実的には「批判の声」や「署名活動」といった、法的強制力を伴わない抗議にとどまってしまいがちです。

労使の信頼関係を破壊する

一般論として考えても、会社側はこれ幸いとして「法的紛争に発展しなければ、多少の抗議の声など無視して問題ない」という姿勢を取ることは望ましくありません。

労働者の同意を得ず、あるいは、少なくとも理解を得るための努力をせずに、会社の上層部の判断だけで就業規則の不利益変更を決め、それを受け入れることを一方的に労働者に強要するようなスタンスは、労使の信頼関係を破壊してしまうからです。

その結果、退職者が続出したり、インターネットの掲示板に書き込まれて採用活動に影響が出たりなど、会社の人事戦略に大きな影響が出てしまうおそれがあります。今は人手不足の時代であり、とくに飲食業界は人手不足が著しいので、なおさら致命的です。

この点、ドトールコーヒーも認識しているようで、広報担当者との電話のやり取りの中でも、「社内で不満の声が出ているのは認識しているので、これから改めて、従業員には丁寧に説明をしていくつもり」との発言がありました。

就業規則の変更をどのように行うかは、まさに、会社の従業員に対するスタンスが反映される場面です。

どの会社においても、経営上何らかの事情があって、就業規則を不利益に変更しなければならない場面が生じる可能性はあります。そのとき、裁判で勝つ・負けるではなく、労使の信頼関係を第一に考え、変更内容の大小にかかわらず、変更することを決めた段階で、従業員に理由や背景を含めて説明を尽くし、原則としては全従業員の個別同意を得ることを目指すべきであると筆者は考えます。

結果的に全従業員の個別同意が得られなかったとしても、そのプロセスを踏んだ会社のスタンス自体を多くの従業員は評価し、法的紛争のリスク回避になるだけでなく、「不利益変更」というネガティブな環境変化も乗り越え、むしろ、労使の信頼関係の維持・強化にもつながっていくのではないでしょうか。

榊 裕葵 社会保険労務士、CFP

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さかき ゆうき / Yuki Sakaki

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。会社員時代の経験も生かしながら、経営分析に強い社労士として顧問先の支援や執筆活動に従事している。

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