政治家のスピーチを分析する若者たちの"真意" スウェーデンにおける「民主主義」の凄み

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住民投票が行われた際の年齢ごとの投票率(筆者撮影)

実際、スウェーデン南西部のある自治体でこの方法を使って3種類の案を作ったうえで「どの公園がいいと思うか」住民投票が行われたこともある。投票には赤ちゃんから大人まで誰でも参加することができ、(写真の)グラフにあるとおり、0~12歳の参加が非常に多かった。乳幼児も親と一緒に投票所に訪れて、自分の手で1票を投じた。これは、公園を利用する子育て世代が家庭内で議論をして参加したことを示すという。

地方自治体がITを活用して地方政治への関心を高めている例を紹介してくれたアンダースさん(筆者撮影)

前編に記したとおり、スウェーデンの投票率は8割程度と高い。

その高い投票率は、選挙時のキャンペーンだけではなく、こうした地道な取り組みに支えられている。とくに、払った税金をいかに使うかを決める話し合いに参加することは、政治そのものだ。

このプロセスにおいて子どもや若者が意思決定に参加できることは、政治への関心を高めることにつながる。

子どもが投票する様子(筆者撮影)

スウェーデンで話を聞いていると、IT・インターネットを生かして民主主義や政治について考える取り組みが多いように感じた。世代によるデジタル格差はないのだろうか。アンダースさんに尋ねると、別の取り組みを教えてくれた。

それは移民と高齢者のインクルージョンを目指すプロジェクトだ。スウェーデンは移民に対して寛大な政策を取っており、誰でも一定期間、スウェーデン語を無料で習うことができる。この仕組みを拡張し、若い移民が地域の高齢者にデジタルツールの使い方を教え、高齢者はスウェーデンの言語や文化を教える場を作っているという。

日本はどうするべきか

最後に、スウェーデン取材を通じて得られた日本に対する示唆をまとめておきたい。

まず、投票率について。日本の投票率はやはり低すぎる。その理由を「若者の政治離れ」のようなありきたりの分析で終わらせてはいけない。普段から、自分の身の回りで税金を使って行われる事業について意見を交わしたり、伝えたりする場を作る必要がある。0歳から参加できる住民投票のような取り組みは1つの参考になる。

次に、社会的包摂について。高い投票率のスウェーデンでも、多くの人が現状に危機感を抱いていた。ネオナチ、反移民などを掲げる人たちの言い分(自分たちこそが、庶民の気持ちを代弁している)は、世界に共通する。

日本でも極端な排外主義を述べる人たちは、自分たちこそが被害者だと述べる。ファブリシアスさんたちがやっているような言論空間の分析に加え、忙しい人にも一目でわかる発信、工夫したデザインは日本にも必要だ。

前編でも紹介したスウェーデン・ユダヤ人会代表の「民主主義は投票のことではない」という言葉を思い出しながら、日本の民主主義をアップデートするために自分ができることを考えてみたい。

治部 れんげ ジャーナリスト

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じぶ れんげ / Renge Jibu

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。日経BP社、ミシガン大学フルブライト客員研究員などを経て2021年4月より現職。内閣府男女共同参画計画実行・監視専門調査会委員、日本ユネスコ国内委員会委員、日本メディア学会ジェンダー研究部会長、など。一橋大学法学部卒、同大学経営学修士課程修了。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版社)、『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館)、『ジェンダーで見るヒットドラマ―韓国、日本、アメリカ、欧州』(光文社)、『きめつけないで! 「女らしさ」「男らしさ」』1~3巻(汐文社)等。

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