政治家のスピーチを分析する若者たちの"真意" スウェーデンにおける「民主主義」の凄み

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

Open Actはファブリシアスさんをはじめとする6人のコアメンバーと、専門家から構成されている。今取り組んでいるのは、テレビの政治番組を使った政治家のスピーチ分析だ。政党のリーダーが出演する14~15分の番組で、出演者が移民についていかなる発言をしているか、経年変化を分析したそうだ。

その結果、2008~2015年は政治家が移民に対してポジティブな発言をしていたという。例えば移民はスウェーデン社会にとって”invaluable asset(非常に重要な資産)”である、といった表現がよく使われたそうだ。

会議で発言をするファブリシアスさん(左端)(筆者撮影)

風向きが変わったのは2015年、中東からの移民が欧州に多数やってくるようになってから。この頃から「個人ではなく、移民を“波”のようなまとまりとして捉え、それに“対応しなくてはいけない”といった政治家の発言が増えている」(ファブリシアスさん)。

現在、ストックホルムとベルギーの首都ブリュッセルの研究者と協業して分析をしたうえで、ウェブ上で政治家のスピーチの傾向変化を可視化する取り組みをしている。

地方政治に多くの人が関わることが大切

マリアさんのように、テクノロジーやデザインに強い若い専門家が、仕事と政治活動を両立する例はスウェーデンでは珍しくない。そういったテーマの会議“Gather”も開かれており、コンサルティング会社のアクセンチュアがスポンサーをしていた。

テクノロジー、デザイン、社会や民主主義をテーマにした会議、Gather開催の様子(撮影:Izabella Englund)

行政も民主主義の「アップデート」に真剣に取り組んでいる。スウェーデン地方・地域政府連盟のノーズ・アンダースさんは地方政治の重要性についてこう話す。

「スウェーデンで提供される公共サービスの75%は地方政府が管轄しています。持続可能な社会と民主主義のためには、地方政治に多くの人が関わることが大切です」

アンダースさんは、いくつかの地方自治体がITを活用して地方政治への関心を高めている例を紹介してくれた。例えば「公園を作ろう」プロジェクト。PC画面に公園のイラストと総予算が示される。遊具には値段がついていて、自分が好きなものをドラッグ&ドロップしていくと、いくら使ったか表示される。

これは「人々に経済感覚を持ってもらうため」の取り組みだという。スウェーデンは高福祉を支えるため税金が高い。有効に使うためには「何にいくらかかるのか」、地方政府のサービスとコストについて納税者の意識を高めることが必要だ。

次ページスウェーデン南西部のある自治体の試み
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事