ギリシャが危機でも医療の質を維持できたわけ

財政危機から10年、その日本財政への教訓

心配されるのは、医師が費用を節約しようとして、過少にしか治療を施さないことである。しかし、ギリシャでも医師には応召義務(来た患者を拒めない)があり、過少な治療しか施さず治癒が遅れれば、その患者は繰り返し受診することになり、結局費用はかさむことになる。しかし、そうしたことはギリシャではあまり起きていないようである。

ひるがえってわが国の仕組みを見れば、入院医療の一部に包括払いは導入されているが、出来高払いも残っている。日本の医療は財政危機前のギリシャの医療に似た点が多いようである。

ギリシャを他山の石に医療制度改革を

ギリシャは、財政危機後に電子処方箋を導入して医療のIT化を進め、薬剤費にルールを設け、入院医療に包括払い制度を全面導入した。しかも、これらは、2015年1月に反緊縮を掲げて政権に就いたチプラス政権がトロイカの要求をのんで緊縮財政策を受け入れる中で、医療の質を問わず支出削減を優先したことによる緊縮財政策の弊害を是正し、結果的に医療の質を向上させた面がある。財政危機後のギリシャの医療といえども、チプラス政権前と後とでは評価が異なっているようだ。

もちろん、今のギリシャの医療には多くの課題が残っている。医師の確保や医療の高度化、クローバック制度の改善、プライマリーケア制度(かかりつけ医の仕組み)の改善などだ。

とはいえ、今の日本の医療制度と比較して、ギリシャの医療制度が財政危機で劣悪なものになったとは言いにくい。ギリシャの医療制度には日本が導入できていないものがあり、ギリシャを他山の石として、日本の医療制度の改革を進めていく必要がある。

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