2009年10月4日。ギリシャで行われた総選挙の結果、政権交代が起こり、左派のパパンドレウ政権が誕生した。新政権が発足してすぐ、前政権が財政赤字を過少に報告していたという事実を公表した。
その結果、ギリシャの統計や債務返済能力に対する不信感が高まり、ギリシャ財政危機の引き金となった。あれから10年が経った。
緊縮財政でギリシャの医療の質は低下したのか
国債発行が困難になって資金繰りに窮したギリシャ政府は、欧州連合(EU)やヨーロッパ中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の3者(トロイカ)から金融支援を受け、財政破綻に陥るのをしのいだ。しかし、トロイカは、支援した資金がきちんと返済されることを確約するようギリシャ政府に求めた。つまり、増税や歳出削減といった緊縮財政策を求めたのだ。
トロイカは、付加価値税(日本でいう消費税)の増税はもとより、公務員給与や年金給付の大幅カットをはじめとする政府支出の削減を求めた。ギリシャが破綻を避けるためにはトロイカからの金融支援が必要だが、それとセットで緊縮財政策受け入れを迫られた。これを国民投票にかけようと提案したが、EU側から阻止され、パパンドレウ首相は辞任した。
後継政権は連立政権で政権基盤が弱かったが、金融支援を受ける代わりに緊縮財政策を受け入れた。トロイカが求める緊縮財政策についてのギリシャ国民の評判は総じて悪い。増税だけでなく、国民生活に密接な関係のある年金給付や医療への政府支出もかなり削減されており、無理もない。
だが、財政危機後にギリシャの医療の質が低下したかというと、必ずしもそうではないようだ。
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