元・千葉ロッテ荻野忠寛が歩んだ野球以外の道 スポーツと選手の意識を高めるための活動

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湘南ゼミナールで講義を行った荻野。(筆者撮影)取材協力:湘南ゼミナール

一方で、野球ではないほかのスポーツ分野、さらには「教育」の分野で荻野の考えに共鳴する人が出てきた。

2019年6月、神奈川県横浜市の学習塾・湘南ゼミナールで、中学生を相手に講義を行った。野球の話ではない。

テーマは「同じ勉強で成績が上がる人、上がらない人」。野球、スポーツを「勉強」に置き換え、「センス」を磨くことで成績を上げようという講義だ。

大事なのは超集中状態を作り出すこと

相手は父兄ではなく中学生。荻野は、パワーポイントの資料をもとに、丁寧に説明する。同じ先生から同じ授業を受けても、成績が上がる子もそうでない子もいる。それはなぜなのか?

キーワードは「センス」。センスを磨くことで、スポーツでも、学校の勉強でも成績を上げることができる。大事なのは「ゾーン」と呼ばれる超集中状態を作り出すこと。

中学生は一生懸命に荻野の話を聞いている。話だけでなく、荻野は教室のいすを下げて、紙コップに触れていくゲームも体験させた。これが超集中状態を身に付けることに役立つのだという。

さらに、荻野は「目標設定ワーク」というチャートを示し、生徒に記入させた。センスを磨くために必要なのは「目標設定」だ。目標設定をして、その目標に自分を引き寄せていく。そういう形で成功への道筋を自分で見つけていくのだ。

菊池雄星や大谷翔平が花巻東高校時代に書いたとされる「マンダラチャート」と原理は同じだろう。具体的な目標設定をすることで、身に付けるべきスキルや技術が明確になり、努力の方向性が決まってくる。

「湘南ゼミナール」は、あらゆる企業の経営者など、社会の一線で働く人による子どもを対象にしたセミナーを実施している。その一環として荻野忠寛が呼ばれたのだが、荻野のユニークなスポーツセンシング論は、子どもたちに新鮮なインパクトを与えたようだ。

荻野忠寛は、野球の実技の指導者としても一流だ。とくに投球術では、ひじに負担を掛けない投げ方を編み出している。スポーツドクターも認める技術だ。

しかし、少年野球の現場を回るうちに、そうした技術やトレーニング法を教える以前の問題として、子どもがスポーツをする「環境」が未整備だと痛感した。そこで荻野は、一般社団法人スポーツメディカルコンプライアンス協会の設立に参加した。

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