プロ野球のトップレベルの選手たちの意識の高さ、試合で見せる集中力、自分で組み立てる合理的で効率的な練習プログラム、そして体のケアにかけるコストと手間暇。
「僕は、野球選手には、たとえ育成枠でチャンスが回ってこなくてもいいから、機会があればプロ野球に行ったほうがいいと思っています。行って、一流の選手がどんな練習をしているか、どんな意識で努力しているかを実感すれば、人間は変わりますし、その後の人生も変わると思います」
それに引き換え、社会人以下のアマチュア野球の知識量の少なさ。意識の低さ。これでは、アマからいい人材は育たないと痛感した。荻野は技術や知識を教える以前に、「意識」レベルで教えるべきものがあると考えた。荻野はそれを「スポーツセンシング」と名付けた。
優秀な人は「センス」をもっている
「練習メニューを組み立てる以前に『やる人間のセンス』を鍛えなければどうしようもないと痛感したんです。大学院などいろいろ探しましたが、どこにもなかったので独学で理論を作りました。僕は野球で経験したのですが、どんな分野でも優秀な人は『センス』をもっています。『センスがある人』とは、物事を捉える優れた力と思考技術、知識をもった人のことです。
優れたイメージを作って、そのイメージに自分を引き寄せることができる人、ともいえるでしょう。『センス』がなければ、どんなにいい指導を受けても伸びません。
僕がロッテで接したトップクラスの選手も『センス』があるから、自分を鍛えることができるし、好成績につなげることができました。そういう『スポーツセンシング』があるアスリートを育てるために、どんな能力を磨くべきか。そのためにはどんな努力をすべきかを、具体的なプログラムに落とし込んで指導しています」
今、佐賀県の少年野球チームや、東京都町田市など3つのベースボールスクールのアドバイザーを務めている。2017年2月には学生野球資格回復認定も受け、硬式野球だけでなく、高校の軟式野球部、大学の準硬式野球部の指導も行っている。
率直に言って、野球界では荻野のスポーツセンシングに対する理解は「濃淡がある」という感じだ。素直に荻野の考えを受け入れているチームがある一方で、考え方をなかなか理解できず「荻野コーチこそうちの野球を学んでほしい」と言われることもある。トップクラスの野球に触れたことがない指導者には難しすぎるという一面もある。
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