「激減した赤トンボ」が見事復活した地域の秘密 自然の恵みを疎かにしないところからの実践
しかし、赤トンボの減少を全国で比較できる形で示したデータはない。
国立環境研究所の生態リスク評価・対策研究室の五箇公一室長(54歳)は、「減っているのは事実」と話す。「私は富山県出身ですが、赤トンボはめちゃくちゃいましたよ。もうもう大群生。怖いくらい飛んでいました。石投げたら当たるくらいいました。子どもながらに、なんでトンボこんなにいるんだろうと思った。それは今の風景ではないですよね。ばったりいなくなってしまった」。
世界的には、ミツバチとの関係で農薬に注目集まる
日本では、水田の周りの生きものが多くの人にとって「身近な生きもの」であり、近年、関心が高まった。
欧米では、ミツバチの不可解な「大量失踪」が話題に上った。とくに2000年代に入り、働き蜂のほとんどが女王蜂や幼虫を巣に残して消える「蜂群崩壊症候群」(CCD)が数多く報告された。その原因は解明されていない。
欧州連合(EU)は農薬の影響とにらんで、ネオニコチノイド系農薬3剤の屋外での使用を禁止する措置を2013年にとり、昨年その続行を決めた。ネオニコチノイド系ではない農薬を含め、現在4剤の使用が制限されている。
こうした状況を背景に、世界の権威ある科学者と各国政府代表で構成する国連の「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)」が今年5月に発表した報告書は、「世界の食料作物のうち75%を上回る種類が動物による花粉媒介に依拠している」などと生物の「貢献」を強調した。
また、IPBESは2016年には、ミツバチなど花粉媒介生物と食料生産に焦点を絞った報告書を発表した。これにより、日本でも、これまでトンボ類に悪影響を及ぼすと懸念された農薬が、改めてミツバチとの関係で問題視されている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら