「激減した赤トンボ」が見事復活した地域の秘密 自然の恵みを疎かにしないところからの実践

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羽化したばかりのたくさんの赤トンボが飛ぶ動画は圧巻だ。動画ではなく、トンボの羽化殻が稲についた写真もある。

稲に羽化殻を残し、アキアカネは飛び立っていった(写真:齋藤肇さんが7月に撮影、提供)

「1株に3つあるでしょ。とくに多いところを選んで撮ったわけではなく、ランダムに撮影しました。坪計算で50株だから、(うちの田んぼの一部だけでも)万は超えます」

赤トンボと呼ばれるアキアカネは、里で羽化して山のほうに行き、秋になると里に戻って産卵する。田んぼの水に卵を産み、水中でヤゴとなることが多い。いわば、多くのアキアカネは田んぼで生まれ育つ。稲に害をもたらす「害虫」ではなく、ウンカなどの害虫を食べる「益虫」であり、田んぼとは切っても切れない縁がある。

農家の長男だった齋藤さんは、20歳のとき農業を継いだ。宮城県の農薬化学肥料不使用栽培米とJAS認証をとり、無農薬のコメ作りに取り組む。「あの崖の穴がなくなると、カワセミがいなくなる」など生きものの変化を肌で感じ、江戸時代の古文書も読み込んで、自然の中での農業技術を磨いている。

齋藤さんの家と田んぼの近くにある蕪栗沼(かぶくりぬま)がマガンの越冬地であることから、水田や周辺環境の保全・回復を進める人たちの活動が盛んで、そうした人々との出会いがきっかけだった。

田んぼの生きものに目を配る活動

2006年3月に設立され、宮城県大崎市田尻大貫をベースとするNPO法人・田んぼは、大崎市にある蕪栗沼周辺での活動から生まれた。

蕪栗沼は宮城県登米市、栗原市の伊豆沼・内沼とともに日本におけるマガンの数少ない越冬地だった。しかし、全国で湿地が減少するなか、マガンの生息数が急激に増えたため、伝染病の蔓延や環境悪化が心配された。

ねぐらの分散が必要だという声が高まり、蕪栗沼の周辺で冬に田んぼに水を張る「ふゆみずたんぼ」が始まった。そのプロジェクトを中心になって進めた元高校教師の岩渕成紀さんが「田んぼ」の初代理事長。現在は、弟子の舩橋玲二さん(50歳)が理事長を引き継いでいる。

「田んぼ」が活動の軸としたのが、田んぼの生きもの調査だ。2010~2011年には758種もの生きものの「出現リスト」をまとめた。その中で、農家に赤トンボ(アキアカネ、ナツアカネ、ノシメトンボなどアカネ類)の羽化殻を集めてもらい、調査を行った結果、育苗期に使われる特定の農薬が赤トンボの生育に大きく影響していることがわかったという。

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