「激減した赤トンボ」が見事復活した地域の秘密

自然の恵みを疎かにしないところからの実践

よく見られるようになった赤トンボ(写真:舩橋玲二さんが2016年9月に撮影、提供)

舩橋さんは「羽化殻調査の結果も影響したと思いますが、その農薬を使うのをやめた農家が増えた。最近、田んぼの上を赤トンボがたくさん飛んでいたよ、といった観察情報が寄せられています。もちろん、地域全体で見ると、農薬の使用が減り、生物への影響が大きく好転した、と言える状況にはまだないです」と話す。

「有機栽培や減農薬で頑張ってきた人たちが、草取りに回せる体力がなくなってきて、また農薬の使用量を増やしたという話も聞きます」。人口減社会の中で自然共生型農業を進める難しさは格別だろう。

たわわに実った稲の穂。よく見ると、赤トンボが止まっている(写真:舩橋玲二さんが2016年9月に撮影、提供)

宮城県の大崎地域(大崎市と周辺4町)の農業は2017年、「世界農業遺産」に認定された。日本で認定されている11地域中、9番目の認定だった。江戸時代以前から巧みな水管理が行われ、豊かな湿地生態系が保たれてきたことが評価された。

今年秋から、世界農業遺産というシールが貼られたブランド認証米もデビューする。その認証を得る必須要件の1つとなっているのが、トンボ類からカエル類まで9つの指標生物群をそれぞれの農家が調べる「田んぼの生きものモニタリング」だ。

NPO法人・田んぼをはじめとする農家や市民の活動が、地域全体を「底上げ」する礎を築いた格好だ。

赤トンボ、全国各地で急減

赤トンボを見なくなった――。1990年代後半、そんな声が上がり、2000年代に入ると各地で研究者や市民グループによる調査が行われた。

環境省が国レベルで、絶滅の危機に瀕する生物などをリストアップした「レッドリスト」を作成しているのとは別に、全国の都道府県もそれぞれの地域の実情を反映した「レッドリスト」を作っている。現在、アキアカネをレッドリストに掲載しているのは、8府県に上る。

環境省の「農薬の昆虫類への影響に関する検討会」の報告書「我が国における農薬がトンボ類及び野生ハナバチ類に与える影響について」(2017年11月)によると、地域ごとにアカネ類の生息状況を調べた調査は数多くある。

1990年代末と2006~2009年頃を比較して「個体数は1/10~1/30程度に減少」とした静岡県内の調査や、埼玉県西部で2007年に実施した個体数調査により、1990年代に比べアキアカネは1/4~1/5まで減ったと推察しているものなどで、いずれも激減を示している。

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