留学するなら、2年間がちょうど良い《若手記者・スタンフォード留学記28》
きっと、1年だけで留学生活を終えていたら、努力が実を結ばないまま、不完全燃焼で帰国の途についていたことでしょう。しかし、2年目には、1年目の修行の成果が花開き、成績面でも生活面でも納得できるパフォーマンスを発揮できるようになってきました。このペースで行けば、変なコンプレックスも優越感も抱くことなく、手応えを感じた上で、留学生活を締めくくれそうです。
長期留学の3つのデメリット
ここまでは、「なぜ1年間でなく2年間がいいか」かを説明してきました。では、なぜ3年以上はお勧めしないのか。
もちろん、博士号を取得したり、こちらで高い意識をもって、何かに長期間チャレンジすることは素晴らしいことです。そうした人は除いたうえでの話ですが、長期海外滞在(とくに留学)には、3つのデメリットがあると思っています。
それは、「書生ボケ」と「海外ボケ」と「外様ボケ」です。
まず、「書生ボケ」はわかりやすい。アカデミックな理論を学んで、読書と議論に明け暮れるのも面白いのですが、それもあまり長いと飽きてきますし、浮世離れしてきます。社会人経験はやはり貴重で、年下の学生の中には、理論に強くて頭が良いと思う人間はいても、発言に含蓄のいる人間はあまりいません。先日も、日本人の商社マンの方とIT・ネットビジネスについて会話する機会があったのですが、学生との書生論に明け暮れている身には、とても新鮮でした。
2つ目は「海外ボケ」。ボケというと言葉が悪いのですが、あまり海外に長くいると、日本を見る目がよくも悪くも歪んでくるように思います。変に日本を美化したり、逆に卑下したりするようになりがちです。
たとえば、現地で長らく働いている日本人の中には、日本企業相手に商売をしていながら、日本や日本企業がいかにダメかを力説する人がいて、「そんなに日本が嫌いなら、アメリカ企業相手にビジネスしろよ」と思うことが何度かありました。「日本の文句を言うのがインテリの証」と勘違いしている人がたまにいます(日本にもこういう人は多いですが)。
個人的には、最終的に日本でキャリアを築くつもりならば、若いころにあまり長く海外にいないほうがいいように思います。極めて主観的な意見なのですが、多感な年頃を海外で長く過ごすと、良くも悪くも、自分の内面に日本社会とは折り合えない何かが、生まれてしまうように感じます。
そういうと、「日本の若者は内向き」だと揶揄されそうですが、海外に滞在することと、外向きであることは別の話です。海外に住んでいても、内向きの人はいますし、日本に住んでいても、外向きの人はいます。
3つ目の「外様ボケ」というのは、マイノリティーとしてのメンタリティーが身についてしまうという意味です。弱者のメンタリティーと言い換えてもいいかもしれません。