下落説が噂される家の「売り・買い時」はいつか 価格下落が取り沙汰される「20XX問題」の真相

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一方、大手デベロッパーや大手ハウスメーカーなどは、2020年の義務化の前から、すでに最新の省エネ基準でマンションや戸建てを建てている。つまり、すでに最新の省エネ基準に適合した住宅と、そうでない住宅が混在する状態になっているので、ちまたの噂のようにはならないだろう。

宅地の価格が急落?

「2022年問題」も法制度を根拠にしている。これには都市部にある「生産緑地」が絡んでいる。

話はバブル期にさかのぼる。バブル期には住宅が乱開発された。住宅の供給の必要性はあるが、土地の合理的な活用が妨げられることのないようにと、都市部の「市街化区域」(=市街化を促進する地域)の農地には、宅地並みに課税をかけるなどして農地の宅地化を促す一方で、「市街化調整区域」(=市街化を抑制する地域)では、自由に住宅を建てることができないようにした。

一方で、農業で生計を立てている人たちが困らないように、市街化区域内の農地で30年継続して農業を営む場合、「生産緑地」に指定して農地課税を継続し、終身農業を営むなら相続税の納税を猶予するなどして、農地として保全することとした。

こうした生産緑地法の改正が施行されたのが、1992年。その30年の期限が切れるのが、2022年になる。つまり、2022年には生産緑地の指定が解除され、農地を宅地に転用できるようになる。農業従事者の高齢化や後継者不足もあるので、こぞって生産緑地が宅地として売られるようになり、その結果、都市部の宅地が暴落するというのだ。

だからといって、こうした予想できることを政府が見過ごすわけはない。2017年に生産緑地法を改正して、従来の生産緑地の優遇措置を10年間延長できるようにし、10年経過後に延長を繰り返すことも可能にする「特定生産緑地制度」を創設した。さらに、生産緑地の指定要件の緩和や所有者が農業に従事する以外の選択肢を広げるような法改正も行った。

国土交通省が、2018年1月に練馬区と世田谷区の農家に調査したところ、6割以上の農家が所有する「全ての生産緑地」について特定生産緑地の指定を受けると回答しており、「一部の生産緑地」について特定生産緑地の指定を受けるとの回答を合わせると、約8割の農家が特定生産緑地を活用する意向があることがわかった。

また、特定生産緑地の指定を受けない場合でも、30年経過後すぐに市町村に農地の買取申請をするのは約4分の1だった。したがって、30年経過後に宅地として市場に出回る農地は、限定的と見られている。

生産緑地を継続する大きな要因が、相続税の納税猶予の優遇も受けられなくなることだ。猶予されていた相続税を相続時にさかのぼって納税する必要があるため、特定生産緑地の指定を受ける意向につながると考えられている。

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