パナソニックとシャープを分析する 「経営の危機」は乗り越えたのか?

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やむをえず減資と増資を行ったシャープの状況は?

続いて、シャープの分析を行います。まずは貸借対照表(6~7ページ参照)を見てください。「純資産の部」に注目しますと、前年度末より「資本金」と「資本剰余金」がかなり減っていることがわかります。合計で約2706億円という大幅減です。これは1365億円ほどの増資を行った後なので、実際にはもっと減ったわけです。

その一方で、「利益剰余金」がマイナスの2909億円から1412億円まで、4321億円ほど増えていますね。これは、資本金と資本剰余金を減らした分を、利益剰余金に回したからです。なお、株数は減らしていません。

つまり、減資を行ったのです。減資とは、会社の業績が悪化した場合、資本金を減らして利益剰余金を増やすことで、財政を立て直したり、株主配当のための財源を確保したりすることです。目的やそのやり方はさまざまです。

では、シャープの場合は、何のために減資を行ったのでしょうか。シャープの説明によりますと、「今後の資本政策をやりやすくするため」だと言っています。

これについて詳しく説明しましょう。配当は利益剰余金から行うことが大原則ですが、当然のことながら、利益剰余金がマイナスですと配当はできません。利益剰余金は利益の蓄積で、当期純利益のマイナス(当期純損失)が続くと、利益剰余金が枯渇し、ついにはマイナスとなってしまいます。利益剰余金のマイナス額が大きくなり過ぎて、純資産全体がマイナスになった状態を「債務超過」と言います。

先ほども触れたように、シャープは前年度末に利益剰余金がマイナスでしたから、今はまったく配当をしていませんが、財務上の“見かけ”をよくするために減資を行ったのです。利益剰余金がどんどんマイナスになっていくと、「債務超過に陥るのではないか」とか、「当分は復配しないだろう」という印象を投資家に与えてしまい、株を買ってくれる人が少なくなってしまいますからね。

あくまでも、これは見かけ上の問題で、つまりは勘定科目の付け替えですから、どれだけ意味があるのかということはわかりません。このようなやり方以外にも、株数を減らすという減資もあるのですが、それだと株主に大きな影響を及ぼしてしまいますから、シャープは勘定科目の付け替えだけを行ったのです。

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