なぜインフレの本質を誤解してしまうのか? 「円安→物価上昇→生活苦」は、一面的な見方

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2014年は実質賃金が目減りするかもしれないが…

たとえば、「インフレ」が進むと、日本人の多くが貧乏になると訴える人がいる。その根拠は、簡単にいえば、「インフレ」になれば、買い物をするときの負担が増える。その際、賃金が増えていない、あるいは増えたとしても微々たるものなので、実質賃金(名目賃金から物価上昇率を差し引いたもの)が下がり、家計の生活が苦しくなる、ということだ。  

確かに、2014年は消費増税もあって、家計の実質賃金は低下する可能性が高い。「インフレを目指すアベノミクス政策は、人々の生活は貧しくなるので持続可能ではない」と言いたいのは、心情的には理解できる。ただし、この考えは、「インフレという経済現象」に対する根本的な誤解に基づいている。

以前のコラムでも述べたが、インフレとは、モノだけではなく、サービスを含めた消費活動全般の価格上昇である。外食、旅行、フィットネスクラブなどの、従業員の人件費が直結するサービスを含め、安定的に価格上昇が実現するのが、インフレという現象である。インフレ率をプラスで安定させることが、日本銀行を含め、世界中の中央銀行が目指していることである。

「インフレ=貧しくなる」、という思い込みをする方々は、アベノミクスの発動で大幅な円安(円高修正にすぎないのだが)が起きたことの負の面だけしか見ていないので、なかなか理解できないのではないか。確かに、円安による「輸入インフレ」で、ガソリンなどの必需品の価格上昇はいち早く起きる。これも実は一部の品目の価格上昇なのだが、これを「インフレ」、あるいはもう少し厳しい言い方で「コストプッシュ型インフレ」と称し、「コスト増加」の側面のみを強調する。円安で「インフレ」が起きているだけなので、「円安が大きく進まないと2%のインフレが実現しない」という予想すら聞かれる。

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