U18侍ジャパンが今回も優勝できなかった背景

高校球児たちにとって国際交流の場にすべき

初戦のスペイン戦では、格下相手に日本は苦戦した。まだ甲子園の疲れが十分に取れていない選手もいたのだろう。バットの振りも鈍かった。

この試合、筆者は日本サイドの三塁側スタンドで見たが、周囲にはメディアのほかには、現地在住の日本人と、韓国人の観客が数十人いただけだ。試合は入場無料だった。

出場各国の国旗もあった(筆者撮影)

筆者の前に座った韓国人の中年男性は、大きなタッパーからキムチとご飯を取り出して食べ始めた。キムチを勧めてきたが、「ノーサンキュー」というと、「ジャパニーズ?」と聞かれた。

すこし緊張したが、その男性はにこやかに「キムチがスメル(匂い)ですいませんね」と片言の日本語で言った。周囲には何人かの韓国人客がいたが、驚いたことに、日本が8回に逆転すると歓声を上げて喜んだ。このことを侍ジャパンの高校生にも知ってほしいと感じた。

この試合、日本は辛勝。スペインチームは肩を落としてグラウンドを出たが、家族と思しきスペイン人の一団が、選手の肩を抱き、拍手をして選手を温かく迎えていた。こうしたシーンは勝敗にかかわらず、台湾やオーストラリアチームでも見られた。

試合数をこなすうちに、日本チームもリラックスしてきたように見えた。2戦目、3戦目は外野席で観戦したが、中堅の森(桐蔭学園)と左翼の遠藤(東海大相模)が、投手・西純矢(創志学園)の投球に「速え!」「すげえ!」「見えねえ!」「消えたよ!」と掛け合いをしていた。同じ神奈川県の2人は、ライバルのはずだが、一体感ができてきたのだ。

感心したのは奥川恭伸(星稜)だ。彼はオープニングラウンドは出場しなかったが、試合の攻守交代時に外野手のキャッチボールの相手を務めるなど、かいがいしく動いていた。口元にはあのスマイルが浮かんでいた。彼の温かい笑顔が、チームに一体感をもたらしつつあったともいえよう。今年の甲子園での、球児たちの「スポーツマンシップの発露」が、ここでも見られたのだ。

ヘッドコーチが選手を一喝

チームはオープニングラウンドではアメリカに勝ったものの台湾に負けて4勝1敗、スーパーラウンドではカナダ戦で奥川が好投して勝ったが、韓国にはタイブレークの挙句に惜敗、そしてオーストラリアにも負けて、5位に終わった。2013年に現在の形で、隔年のU18ワールドカップが行われるようになってから日本は2位・2位・3位だったが、今回は最低の成績に終わった。

一部メディアが報じるところでは、笑顔を浮かべていた選手はコーチに一喝されたという。アメリカに勝利し気の緩んでいたチームをまとめるためだったようだが、こうした指導者の締め付けが、その後のチームにどんな変化をもたらしたのだろうか。

当コラムでも何度か指摘した通り、甲子園で使用する飛びすぎる金属バットと、国際大会の木製バットのギャップがあったことは否めない。今年の侍ジャパンは序盤戦では大振りせず、小さく速い振りで好打を連発していたが、大会が深まり、好投手が登場するとバットは湿りがちになった。付け焼き刃では対応できなかったのだろう。

選手の人選にも問題があったとの指摘があった。優勝した履正社からは1人も選ばれなかった。また内野手には、本来は遊撃手の選手が6人も選ばれた。さらに投手の2本柱である奥川恭伸(星稜)と、佐々木朗希(大船渡)が、フルで使えなかったことも大きい。一部の投手が何度も起用されるなど、起用のバランスも悪かった。さらに韓国戦では、タイブレークの戦い方にもう一工夫ほしかったように思えた。

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