しかしそういうこととは違う次元で、大きな問題があったのではないか。選手たちは「世界一を目指せ」と吹き込まれ、次第に日の丸を背負う重さを感じていったのではないか。
スポーツ選手が実力を発揮するためには、メンタルが重要であることは、もはや常識だ。緊張せずリラックスして体を動かすことで、本来の実力が発揮できる。日の丸を背負った代表選手が、がちがちになって敗れ去る風景を、われわれはいろんな大会で何度も目にしてきたはずだ。
韓国戦の敗戦の後、主将の智辯学園、坂下翔馬は泣き崩れた。これは痛々しい風景だった。
「必ず勝て」「へらへらするな」「遊びじゃないんだ」と選手を追い込むような指導は、今や時代遅れだ。昨今の指導者は、選手が普段着の気楽さで試合に臨めるようにメンタルトレーニングをするのが当たり前になっている。高校野球でもそれはかなり普及しているはずだ。
さらに言えば、指導者と一部メディアは「何としても世界一」と思っていたかもしれないが、多くの野球ファンはそこまで思ってはいなかっただろう。
トップクラスの「高校球児」の学びの場にする
事実、日本はU18ワールドカップでは1度も優勝していないし、その間の年のBFA U18アジア野球でも近年は、苦戦しているのだ。「世界一」がそれほど甘くないことは、周知のことである。
いつの間にか「甲子園」に続いてU18の国際大会までもが「絶対に負けられない」試合のように報じられるようになったが、 過酷な「甲子園」を経たばかりの選手にさらに大きな責任を担わせるのは、酷だろう。
むしろ、世界大会は、トップクラスの高校球児の「学びの機会」にすべきと筆者は考えている。
「見聞を広めるだの、国際交流だの、きれいごとを言っていては勝てない」というかもしれないが、勝利至上主義一辺倒で、近頃のU18侍ジャパンは敗退しているのである。目標を別に定めることも賢明だろう。2年後に開催される次の大会では「世界一」ではなく、選手に今後につながる「最高の体験」をさせることを目標にして、U18侍ジャパンを立て直す必要があるといえる。
(文中一部敬称略)
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