高校野球での「スポーツマンシップ」本当の意義

過剰な美談作りでなく必要なのは正しい理解

初優勝を決めた履正社ナインを祝福する一塁側アルプススタンド(写真:共同通信社)

今夏の甲子園は、履正社(大阪)の初優勝で終わった。大会期間中、際立ったのは準優勝した星稜(石川)奥川恭伸のクレバーで効率的な投球だ。

奥川の1イニング当たりの投球数は12.39球。1イニング15球で投げれば、プロ野球でも優秀とされる中で、際立って効率の良い投球をした。この投球なら長いイニングを投げても、肩ひじの消耗は他の選手よりも大幅に少なくなる。投球内容も、ゆったりと構えて抜くべきところは抜き、力を入れるところは入れて絶妙の緩急を見せた。

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それに加え、マウンドでの態度も特筆ものだった。炎天下の大舞台で、奥川はつねに悠揚迫らず、つねに笑顔を浮かべていた。決勝戦で痛恨の本塁打を打たれても口元から笑みが消えることはなかった。

星陵高校は大会前から「必笑」というスローガンを掲げていたというが、チームの柱である奥川のいつに変わらぬ柔和な表情が、チームメイトに与えた影響は大きかったはずだ。

高校野球でスポーツマンシップが芽生えてきている

星稜だけでなく、最近の甲子園に出場する選手の表情は柔らかで、自然体であることが多い。少し前までのように、眉を吊り上げて大きな声で気合を入れるような選手は少なくなった。

アスリートのメンタルトレーニングを取り入れているのだろう。オリンピックなどでも実力を発揮するためには、自らをリラックスした環境に置くことが大事だといわれている。甲子園を目指すようなトップクラスの高校では、大舞台で普段と変わらぬプレーができるようにするための準備もできているのだ。

指導者も選手を怒鳴り散らすのではなく、自己肯定感を醸成するような指導、教育ができる人が増えてきた。そうした「心のゆとり」の副産物ではないかと思うが、対戦相手との関係も、ぎすぎすしたものではなくなっている。攻守の交代時でも、相手チームの選手に笑顔を見せるシーンも増えた。これは本当に喜ばしい。高校野球の現場に、スポーツマンシップが芽生えているのである。

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