空き家の維持費年25万円、相続した家の処理 3つの理由で急増、知っておきたい空き家問題
■どうして空き家問題が起きるのか
「空き家」が増えている理由には、次の三つがあげられます。
一つ目は「日本人の長寿化」です。
例えば、子どもたち世代が家を持ちたいと考える年齢に達したとき、私たち親世代は健在しているケースが多いと推測されます。
「昔は平均寿命が短いため、親の亡き後に、まだ若い子どもが、その家を引き継げました。いまは長寿化で、親の死などで家を引き継ぐ前に、子どもたち世代が他の便利な場所に、持ち家を構えるケースが多いです」と牧野先生。
二つ目の理由は「人口の減少」です。
日本の人口は減っているのに、新築物件は毎年、増え続けています。新築が好まれる日本では、中古物件は利用されにくいのです。
三つ目の理由は「生活様式の変化」です。
共働き家庭が増えて職場や駅、保育所に近い場所に住む人が増えました。不便な場所にある親の家での同居が減っています。これらのことが背景となり、子どもは親の家には住まなくなり、空き家が増えているのです。
都市部でも空き家問題は深刻
「空き家は地方だけの話ではありません。首都圏などの都市部でも空き家問題は深刻です」と牧野先生。
下の図のように1960~1980年代、都市には職を求めて地方から人が集中し、都市周辺部の郊外には「ニュータウン」が次々と作られました。同年代の家族が一斉に入居し、駅まではバス、駅からは電車で都市の中心部に通勤しました。
そして現在、ニュータウンで育った子どもたちは、都市の中心部で就職、結婚後、職場の近くに家を持ち、ニュータウンには戻って来ません。
残された両親が亡くなると、その家には誰も住まないため空き家になります。隣近所も同じ状況で、地域に空き家が増えていきます。空き家が長年放置されて老朽化し、防災、防犯、衛生面で近隣住民の生活を脅かす「特定空家」となる問題も出てきました。
シニア世代は都会で就職、結婚して、郊外のニュータウンに家を建てるケースが多かったため、地方や市街化調整区域にある「実家」が空き家に。
自分の子どもが巣立ち、結婚して市街地にマンションを買うケースが多いため、郊外のニュータウンにある「我が家」がいずれ空き家に。