詐欺まがいの婚活に疲れ果てた男性の一大転機 自治体の婚活支援で結婚した人のリアル

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結婚前提に付き合うか否かは、本人たちの年齢や意向以外に、出会う場所と方法も大きく左右する。この2人の場合は、「婚活」サポーターによる引き合わせなのだから、交際開始から結婚を視野に入れることに違和感はない。

ただし、付き合い始めて5カ月後に智弘さんがプロポーズをしようとしたところ、志保さんは「まだ早い気がする」と難色を示した。志保さんには10年前に離婚をした経験があり、前夫とは言い争いが絶えない結婚生活だったらしい。智弘さんによれば「なんでそんな男と結婚したのか」と思うほどの人物で、志保さんは男性への不信感が強かったのだ。

「彼女の個人情報になってしまうので詳しくは話せませんが、とにかくひどかったようです。私が当たり前のことをするだけですごく喜んでくれますから」

志保さんが病気のときは「大丈夫?」と声をかけて、胃腸が弱っていても食べられそうなものを差し入れる。デートの際は「どこに行きたい?」と聞いてから行き先を決める。仕事で悩みを抱えていたら黙って聞いてあげる。これらは智弘さんにとって「当たり前のこと」だ。

「ひっくるめて言えば、彼女の気持ちになって考えることですね」

志保さんは、前夫との苦しかった結婚生活を終えて、解放感に浸りながらも孤独感を募らせていたのだと思う。そうでなければ婚活サポーターのお世話になるはずがない。智弘さんという心優しい味方を得て、大きなやすらぎを感じたに違いない。2人は4月に無事婚約をした。

結婚して一緒に住み始めてから、口げんかをしたことは一度もないと智弘さんは言い切る。お互いに気遣いつつ、不満や意見があれば小出しに口に出すことを心がけているからだ。

「掃除や片付けは僕が主にやっています。料理は彼女がやってくれますが、いつも『今日は何が食べたい?』『これを作るけれどいいかな?』と聞いてくれますね。料理をしている傍らに僕もいて、味見をさせてもらうことも多いです。たいていおいしいですけどね」

ボランティアの人にとってのメリットは…

完全にのろけ話になって来たのでこのへんでインタビューは終わりにしよう。最後に気になっていることがある。2人を結びつけることに尽力した婚活サポーターのモチベーションについてだ。聞けば、交際が始まった後もそのサポーターは2人の相談にのっていたという。もちろん、ボランティアなので報酬を受け取ることはない。なかなかできることではないと思う。智弘さん、菓子折りぐらいは持っていくべきではないだろうか。

「はい。本当に感謝しています。(市役所の事業なので)あまり大げさなお礼をしてはいけないのですが、今後もいろんな面で長いお付き合いをさせていただくつもりです」

つい余計な心配をしてしまったが、婚活サポーターにもメリットはあった。金銭的なものではなく、地域内での人間的なつながりという報酬だ。

智弘さんと志保さんにとっては「遅めの幸せ」をもたらしてくれた恩人であり、夫婦の絆の象徴でもある。生涯、感謝をしてくれるはずだ。そのような体験と人間関係が人生にもたらす豊かさは計り知れない。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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