公的年金の「財政検証」をどう読み解くべきか 制度改正と個人の老後防衛の参考になる

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前述のように、所得代替率とは現役世代の収入に対する年金額の割合で、いわば現役世代と年金世代の収入格差を意味する。仮に所得代替率が下がっても、一定の賃金上昇があれば、実質的な購買力に該当する「実質年金額」(名目年金額を物価上昇率で2019年時点まで割り戻した額)は増え、現在年金を受け取っている人と比べて、将来に年金を受け取る人が貧しくなるわけではない。

公的年金の財政検証が報告された社会保障審議会年金部会(記者撮影)

経済が成長するケース1~3では、所得代替率は下がるが、実質年金額は増える。ケース3では、所得代替率が約18%下がるが、実質年金額は約25%増える。経済成長などが一定程度にとどまるケース5でも、所得代替率が約28%低下するのに対し、実質年金額は約5%の減少にとどまる。

財政検証で示された2つの「幹」

そして、注目すべきは出口委員が言う「幹」だ。今回の年金財政検証には2つの幹がある。1つは「オプション試算」、もう1つは「足下(2019年度)の所得代替率を確保するために必要な受給開始時期の選択」だ。

オプション試算とは、どんな制度改正を行えば、将来世代の給付水準を底上げできるかを試算したもの。言ってみれば、政府や国民全体が今後取り組むべきことを明確にするために共有すべき材料だ。

後者の受給開始時期の選択とは、国民一人ひとりの個人目線で、自分の老後設計をどう考えたらよいか、今後何に取り組めばよいかを明確にするための材料になる。

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