公的年金の「財政検証」をどう読み解くべきか 制度改正と個人の老後防衛の参考になる
今回のオプション試算では、「パートタイマーに対する国民年金から厚生年金への移行拡大(1050万人に適用拡大)」(オプションA)や「基礎年金の拠出期間を現行の40年から45年に拡大」(B)、「65歳以上の在職老齢年金の廃止」(C)と「厚生年金の加入年齢の上限を現行の70歳から75歳に引き上げ」(D)、それに「受給開始可能期間の上限を現行の70歳から75歳まで拡大」(E)の、合計5つの制度改革シナリオが示された。
表はこのうち、A~Dを採り入れた場合、所得代替率がどうなるかを示したものだ。
年金制度改革に立ちはだかるハードル
ケース3では、所得代替率は11.5%ポイント上昇し、現行の所得代替率61.7%を上回る。ケース5でも10.4%ポイント向上し、経済が順調なケース1~3の所得代替率(2046年~2047年時点以降、50.8%~51.9%)を上回る。
5つの制度改革シナリオのうち、どの制度改革が所得代替率を引き上げるのに効果的なのだろうか。5つのオプションの中では、AとBの改善効果が大きく、所得代替率をそれぞれ4%~6%引き上げる。
もちろん、この改革を実現するにはハードルもある。パートタイマーへの厚生年金適用拡大を行うオプションAでは、厚生年金保険料の事業主負担が増えることになり、外食・小売りなどの産業界の反対が予想される。基礎年金の拠出期間延長を行うオプションBは、将来的に約1.2兆円の国庫負担を伴うため、財政負担の増加を嫌う財務省などの抵抗が考えられる。
また、在職老齢年金の廃止(オプションC)を採用すると、現在支給が一部停止されている高収入者へ年金を支給することになるため、その分年金財政的にはマイナスで、将来の所得代替率は若干低下する。在職老齢年金の廃止については、金持ち優遇になるとして批判する層と、高スキル・高収入の高齢就業者の後押しを重視する層の間で議論が戦わされることになりそうだ。
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