「お前が息子でよかった」と言われた経産省官僚
「映画の中で、息子さんが父親に『父さんの息子でよかった』と伝える場面があったじゃないですか。あの場面はグッときました。私の場合は逆で、父から『お前が息子でよかった』と、言ってもらえたんですけどね」
経済産業省の政策シンクタンク、経済産業研究所の藤和彦上席研究員(59)は、試写会を見終わった直後に笑顔で語った。
衆議院第一議員会館地下で行われた、映画『みとりし』への感想だった。藤が言及したのは、映画の中で、最期が近づく父親に息子がかけた言葉だ。
映画自体は、榎木が演じる男性会社員が、がんの告知を受けたのをきっかけに看取り士に転身し、家族が涙と温もりのある死を迎えられるように尽力する物語。原案は、柴田久美子・日本看取り士会会長が担当した。
私が藤と会うのは、試写会が2回目。その3週間ほど前、彼の職場を訪ね、父親を温かく看取った体験を聞いていた。
2018年12月に父の訃報を受けた藤は、東京から家族を連れて名古屋市内の実家に向かった。藤の家族は、実家で父親を看取る選択をしていた。藤が、父親から「お前が息子でよかった」と言われたのはその約一カ月前。
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