93歳の母の最期を娘が「美しい」と感じた理由 長い介護の先に見えてきた意外なこと

✎ 1〜 ✎ 7 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 最新
印刷
A
A
母を看取った長坂幸子(左)と看取り士の西河美智子(写真:筆者撮影)
人はいつか老いて病んで死ぬ。その当たり前のことを私たちは家庭の日常から切り離し、親の老いによる病気や死を、病院に長い間任せきりにしてきた。結果、死はいつの間にか「冷たくて怖いもの」になり、親が死ぬと、どう受け止めればいいのかがわからず、喪失感に長く苦しむ人もいる。
一方で悲しいけれど老いた親に触れ、抱きしめ、思い出を共有して「温かい死」を迎える家族もいる。それを支えるのが「看取り士」だ。
多くの人が人生の最期は、家族にはできるだけ迷惑をかけたくないと考える。しかし、自宅で93歳の母を看取った長坂幸子(56歳)は、それは心情的に理解できるが、本質的には思い違いだと考えている。彼女が看取りを通してたどり着いた境地とは何か。

姉妹の絆を深めた介護と「人生の完走式」

「私の母(中略)は皆様の温かいご声援を胸に、去る3月10日の夜、93年の人生マラソンのゴールテープを無事に切ることができました」

「人生完走式(葬儀)」のチラシ(写真:長坂さん提供)

長坂幸子は、母親の「人生完走式(葬儀)」のチラシを、マンションの掲示板に貼った。2人で暮らしたマンションの集会所でこの式を行う知らせだった。2019年3月のこと。その行間にはすがすがしさが匂い立つ。 

一方で、約8年間もの介護を終えた長坂はなぜか、85歳まで元気だった母親がピンピンコロリと急逝していたら、自分はきっと長い間後悔し続けたはずだと続けた。

理由は2つある。当時の自分は仕事最優先で、母親の世話になりっぱなしだったこと。また、長い介護生活は山あり谷ありだったが、その過程で深く関わった人たちとの絆が、長坂の人生を豊かにしてくれていることだ。

その1つに2歳下の妹との関係もある。

次ページ母親の介護を通して、妹との関係はどうなったのか
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
パチンコ、「倒産」と「リストラ」ドミノの深刻背景
パチンコ、「倒産」と「リストラ」ドミノの深刻背景
空前の中学受験ブーム、塾業界の子ども争奪戦
空前の中学受験ブーム、塾業界の子ども争奪戦
そごう・西武、後釜に「ヨドバシ」が突如登場の衝撃
そごう・西武、後釜に「ヨドバシ」が突如登場の衝撃
AGCが総合職の月給3万円アップに踏み切る舞台裏
AGCが総合職の月給3万円アップに踏み切る舞台裏
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
  • 新刊
  • ランキング
東洋経済education×ICT