自転車通勤の快適さ日本とドイツの圧倒的な差 4割弱が自転車を使って通勤する国の実態
ドイツ全体ではどのぐらいの人が自転車で通勤しているのだろう? 連邦運輸デジタルインフラストラクチャー省の資料 (2018年)によると、36%の人が自転車通勤だ。さらに自転車専用幹線道路などが整備されると自転車で通勤をするであろう人は29%いる。
連邦政府は2012年に「全国自転車交通プラン」を策定。交通における自転車の割合を増やす方針を明確に打ち出した。
しかし留意しなければならないのは、自転車交通の現実は各地方にあるという点だ。実際、自動車や鉄道などに比べると、走行距離はそれほど長くない。
むしろ10km程度までの短距離は自転車のほうが理にかなっている。渋滞、騒音、排気ガスの軽減にもつながる。
日本との違いは?
それから日本と異なるのは、ドイツは地方分権の傾向が強い国であるということだ。実は連邦政府が自転車交通プランを打ち出す前から各地方で自転車道は整備されてきた。自転車専用道の整備具合は都市によって異なるが、ドイツ北西部にあるミュンスターなどは自転車の町として、以前からよく日本に紹介されている。冒頭で採り上げたエアランゲン市も1970年代後半から自転車道の整備を始めている。
また「一般ドイツ自転車クラブ」というNPOに似た非営利法人がある。1979年に作られたもので、現在18万5000人以上のメンバーがいる。同クラブなどは自転車交通の促進のためのロビー活動も行っている。
このように概観すると、連邦の自転車交通政策は、各地方都市の交通政策や自転車クラブのロビー活動などが背景にあって形になったと見るべきだろう。
目を転じて、自転車による通勤はなぜ成り立つのだろうか?
一言でいえば、「職住近接」という事情がまずある。通勤者の半数が10km以下の通勤距離だ。近年、通勤距離の長い人が増えつつあるのだが、伝統的にいえば自分の住む町で働くということが当然だった。
こういう事情の裏返しで、ドイツは経済拠点も分散している。旧東ドイツは少し事情が異なるが、フォルクスワーゲン、メルセデスベンツ、BMWなどの大企業のみならず、力のある中小企業も全国にちらばっている。
歴史的にいえば、各地方都市があたかも1つの国のように、経済、エネルギーなどのインフラ、文化、教育に力をいれてきた。自転車道の整備が地方都市から始まっているのも、そういうドイツの都市の特徴があるからといえる。
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