自転車通勤の快適さ日本とドイツの圧倒的な差 4割弱が自転車を使って通勤する国の実態
また都市そのものが相対的に小さい。最も人口の多い都市はベルリン(360万人)だが、5番目以降は100万人以下。人口10万人ともなると「大規模都市」という位置づけになる。このぐらいの都市になると、雇用も多く、近隣の小自治体から働きに来る。したがって「隣町まで通勤」といっても、距離的にはそれほど離れていない。10万人といえば日本の地方でもたくさんある規模の町だが、質的にかなり異なる。
自転車専用道の話に戻ると、近年は都市単位での整備に加え、隣接する自治体をつなぐ幹線自転車道の拡充に力を入れている。エアランゲン市(人口11万人)も雇用吸収力があり、昼夜人口でいえば昼間のほうが多い。周辺の小さな自治体とつなぐ幹線自転車道を拡充する動きが増えている。
始まりはモータリゼーションだった
地方都市から始まった自転車専用道の整備だが、なぜ作ったのだろうか。その一例としてエアランゲン市のケースを紹介しておこう。
1970年代末から整備を始めた同市だが、背景にはモータリゼーションがあった。自動車は発展の象徴だった時代だ。しかし発展という名のコインの裏側には環境汚染、騒音などがある。これを問題視して、自転車道の整備に取りかかったのだ。
その実現には、幹線道路を渡るための大がかりな専用トンネルを作るかと思えば、自動車道を分割するだけの簡単なものまで弾力的な予算配分を行った。また一方通行の道路も、自転車にとっては実際のところ、問題がないことも多いので通れるようにした。このように作られてきた自転車専用道は、現在もアップデートが行われている。
また、市内の地区に住む市民たちが、「ここに自転車専用道が必要」「拡充すべき」といった声を市に対して上げるケースもある。警察も定期的に事故発生の統計や原因の分析、安全運転のための啓発を継続的に行っている。このようにつねにハード面とソフト面のクオリティーを高めていっている。
さらに注目すべきは、1970年代当時の自転車専用道を作った市長のアイデアだ。すでに同市内でも知る人はほとんどいないが、「交通の平等」という考え方があった。平等の追求は「近代」の大切な部分であるが、モータリゼーションの時代は「自動車」が交通の王様だ。ところが、成熟した社会では、目的や好みによって、人は歩行、自転車、公共交通、自動車と「選択」をする。
ここには自動車が王様という考え方は成り立たない。どの移動手段を使っても安全で快適、そして最適速度で移動できる「平等」な状態が望ましい。この考え方は21世紀に入ってますます重要になっていることは確かだろう。
ところで、先日筆者は東京を訪ねた。朝、オフィス街に出ると、自転車通勤の人が増えているのに驚いた。しかし、自動車道を走らねばならないところも多い。そうすると当然、自動車は速度を落とさねばならず、自転車は安全性に問題がある。
言い換えれば、「自動車が王様」というモータリゼーションの時代の交通がそのまま残っているところに自転車が入り込んでいる状態だ。21世紀型の交通政策の理念を再考し、形にしていくべきだろう。
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