"最年少"役員に託された帝人の復活 構造改革と成長戦略で問われる手腕
合成繊維大手の帝人は1月31日、今年4月1日付の社長交代を発表した。2008年6月に社長に就任した大八木成男社長(66)が代表権のない会長に退き、高機能繊維、複合材料事業などを担当している鈴木純取締役常務執行役員(55)が新社長に就く。
鈴木氏は現在の取締役の中で”最年少”だ。1983年に東京大学大学院理学系研究科を修了後、帝人に入社。中央研究所、創薬評価研究部長、帝人グループ欧州総代表などを経て、昨年6月に同社の取締役に就任している。また、大阪大学医学博士号を取得するなどの経歴を持つ。
1月31日に大八木現社長とともに記者会見した鈴木氏は、「構造改革と成長戦略をいかにするか。成長戦略に向けたポートフォリオをどう変えていくか。経営環境は厳しい状況が続いているが、中長期の経営ビジョンを生かしながら、果敢に皆を引っ張っていきたい」と抱負を述べた。
直近の業績は苦戦
鈴木氏が「経営環境は厳しい状況」と述べた通り、帝人は大八木社長が就任した08年以降、リーマン・ショックや東日本大震災、さらには欧州金融危機などのあおりで、直近5期のうち、09年3月期と10年3月期、13年3月期がそれぞれ連結最終赤字に転落している。
収益力の回復に向けた事業構造改革に着手し、アラミド繊維はオランダ拠点の人員削減、樹脂ではシンガポール拠点の一部休止、炭素繊維は米国拠点の一部休止や人員削減を行い、日本やドイツ拠点への生産集約や効率化を推進。昨年末から今年にかけて、松山工場でのパラキシレンの自社生産と販売の中止を発表し、子会社の帝人デュポンフィルムの茨城工場も事業活動停止を決めた。
帝人は12年2月に中長期経営ビジョン「CHANGE for 2016」を公表し、2016年の売上高1.3兆円、営業利益1000億円という目標を掲げた。
一方、14年3月期の業績見通しは売上高8000億円、営業利益は200億円と目指す水準とは大きな開きがある。そこで昨年9月、ビジョン策定後の経営環境の変化を踏まえ、収益目標を再設定することを発表している。
2月3日に発表した2014年3月期の第3四半期決算は、連結純利益が50億円となり、前期の9億円から大幅に回復した。しかし、鈴木新社長は「先に進む道は見えているが、まだ道半ばかな、という部分もある」と言う。
また、「(素材事業のリストラも)さらにもうちょっと。5年先、10年先まで生きていくには、どうしたらいいか。ちゃんと利益を出せる形にするには、どこまで踏みこむのか。マネジメントの中で真剣に議論している」とも述べている。
大八木氏は、「(鈴木氏は)いかなる困難でも乗り切れる、基本的な明るさ。多数のチームの人を引きつける魅力。強じんな精神力を持つタイプ」と評する。道半ばの改革を今後どのように推し進めるのか。55歳の新経営者の双肩に帝人復活が重くのしかかっている。
(撮影:今井康一)
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