ハーバードエリート集団が見た、新しい中国

よく語られる「中国像」を鵜呑みにしていいか?

中国人HBS生と話してみても、大気汚染を理由に卒業後は自国に戻らず、アメリカで働くことを希望している人が多かった。北京のインターナショナルスクールは、約5億円を投じて空気清浄機を完備した屋内運動用のドームを建設するなど、大変な事態になっている。

もちろん中国政府も黙って見過ごしているわけではない。今、中国が掲げる第12次5カ年計画(2011~15年)では、エネルギー効率の改善や大気汚染の改善を目指している。しかし、政府機関とのビジネスも多い、ある研究設備メーカーの社長によると、中央政府は地方政府に対して、はたから想像するほど強い強制力を持っていないという。経済成長を優先させたがる地方政府をどのように環境配慮させるか、今後の中央政府の正念場だそうだ。

香港ビリオネアが期待を寄せる習近平政権

そして、最後のテーマが習近平政権だ。短期的な経済成長を維持する傍ら、公害や汚職や過度な規制といった長期的な経済発展の妨げとなるような課題を解決しなければならないというジレンマを抱える。しかし、改革を断行するにも、共産党有力者や政府系企業といった既得権益層の抵抗は必至で、容易なことではない。

前述した香港のビリオネアの方々は、習近平政権に大きな期待を寄せていた。彼らは、「習近平政権は、人民軍、共産党、政府を掌握することに成功し、鄧小平以来、最大の権力集中を達成した」とみていた。そして香港ビリオネアが望むのは規制緩和、人民元の自由化、金利の市場化、公害対策、政府系企業への優遇措置の廃止などの構造改革であり、既得権益層との真っ向勝負することだ。そのため上海FTZ(自由貿易試験区)の動向にも注目しており、これが成功すれば中国各地にFTZが広がっていくだろうと予想していた。

人から与えられた「答え」でいいか?

たかだか10日間旅行し、何人かと話しただけで中国を理解するのは無理がある。しかも比較的裕福な沿岸部の大都市を訪ねただけでは、中国を見たとは言えない。それでは、将来のリーダーを育てることを目的とするHBSは、中国研修プログラムを通じて何を学生たちに教えたかったのだろうか。

巷で言われる中国像が真実か、自分なりに考えることが必要ではないか(写真左端が筆者)

日本の学校と決定的に違うことだが、HBSは決して、学生に答えを与えない。普段の授業でも、教授は質問を投げ、ディスカッションをファシリテーションするだけで、何が正しいかの判断は各自に委ねる。刻々と変化する現代において、最新の答えを学んだところで、それが数年後に正しいとは限らないからだ。それよりも、考える視点と力を身に付けたほうがよほどためになる。

中国研修プログラムに関しても同じことが言えるだろう。1978年から始まった改革解放政策により、中国は目覚ましい経済発展を遂げ、5億人以上を貧困から脱出させた。一方で貧富の差は拡大し、公害や汚職や人権侵害といった問題も絶えず、経済発展の代償は大きい。今後の中国がどうなるかは誰もわからず、現在の成長モデルの限界が来ているという専門家もいれば、その逆を唱える専門家もいる。

われわれもメディアや専門家に対して答えを求めるのではなく、そこから得た情報を基に、自分の頭で考えていくようにしたい。今回の研修旅行で見聞きしたことも、そのまま鵜呑みにしていいはずはなく、考える材料にしかならない。巨大でダイナミックなこの国とどうやってうまく付き合っていくかを、一人ひとりが深く考えるときが来ているのではないだろうか。

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