「採用してから育てる」がNGなこれだけの理由 採用の失敗が引き起こす大きなデメリット

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ビジネスには成功と失敗が付き物です。失敗したことがないという会社は、そもそもチャレンジしていないということです。チャレンジしない限り、成功は得られません。しかし、私は「採用は失敗してはいけない」と考えています。

先の会社の例のように、組織に与える影響が大きいからです。それだけではありません。会社だけでなく、採用した人に対しても傷を負わせることになるからです。お互いに傷だけが残る──。これが採用を失敗したときに生じる状態です。

「ダメだったね」では済まされない

また、採用活動は、限られた資源の中で、かけるべきコストは分配しなければなりません。時間、費用、人的労力は、プラスのリターンを生み出すためのコストであるべきです。採用を失敗した場合には、時間も、費用も、人的労力も、コストとして本来かけるべき方向に費やすことができません。

本来得られるはずであったリターンも奪われることになるのです。営業活動の場合、多くは、「今回のA社の案件が、ダメだったね」で済まされます。なぜなら、ダメなら、次に当たればいいだけですから。

一方、採用活動の場合、そうはなりません。「今回のAさんの採用、ダメだったね」では済まされません。簡単には辞めさせることもできません。夫婦関係も同じです。「今回の相手はダメだったね」とすぐに離婚できません。協議を重ねて、場合によっては裁判所の審判を仰ぐことにもなります。その間の精神的コスト、時間的コスト、金銭的コストは計り知れません。

採用も同じです。採用を間違えると、「点」だけでなく、「線」だけでもなく、「面」の単位で組織に与える影響は複利的に大きくなるのです。

人を採用するときには妥協してはいけません。しかし、妥協して人を採用する場面をこれまでにしばしば見てきました。それらには共通する状況があります。

それは、「人手不足で追い込まれている状況」です。人手が足りず、「不足を埋めないと回らないから」という動機による採用です。新規事業立ち上げや既存社員の突然の退職など、その背景はさまざまですが、共通するのは人手が不足していて、「今すぐにでも人を採用したい」という状況です。こういうときこそ妥協しやすいのです。

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