ミニストップ「おにぎり100円」へ値下げのわけ リスクと背中合わせ、異例のゲリラ値下げ

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コンビニのおにぎりは、具材によっては原価率が高い上、競合各社は、値下げによって悪化した製造会社や加盟店の利益を本部側が補填している。この負担が重いため、競合各社は「セール(値下げ)はあくまで、普段来店しない顧客を誘導するためのきっかけ作り」というスタンスだ。

全店で100円へと値下げして以降、ミニストップではおにぎりの販売個数が1.5~2倍に増加した。おにぎりだけをみると、販売個数が増えたことで、粗利益は値下げ前以上の数字を確保している。

今第1四半期は赤字幅が拡大

ミニストップは値下げで悪化したおにぎり製造会社の利益を補填しているが、今のミニストップにその余裕はない。今2020年2月期について、営業総収入2100億円(前期比2.3%増)、営業利益14億円を見込んでいる。だが、第1四半期(2019年3月~5月期)の営業総収入は506億円(前年同期比1.3%減)、営業損失21億円(前年同期実績5億円の赤字)と、苦しいスタートになった。

100円戦略でおにぎりの販売個数が増えても、ミニストップ全体の客数に直結するわけではない。

おにぎり100円戦略を始めた7月は気温が上がらず、ソフトドリンクなどの販売量も減少した。コンビニ業界全体の業績が振るわず、例えばセブンの7月の既存店売上高は前年同月比3.4%減だった。ミニストップも同5.1%減とセブンよりも厳しい結果で、とくに客数は同6.6%減まで落ち込んだ。おにぎりの値下げが客数増につながっている様子はまだ見えない。

今後、おにぎり100円戦略によって、客数増加やサラダなどと組み合わせた買い上げ点数増加につなげられなければ、利益を一層悪化させる懸念がある。規模で劣るミニストップが現状を打破するために放った手は、大きなリスクと背中合わせだ。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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