昭和から平成と時代は変わり、高校球児の体格は向上し、打球の速度はさらにアップした。
前述のように2001年に日本高野連は金属バットの重量を900g以上としている。スイングスピードを抑えようとしたのだが、選手の体位向上と筋トレなどによるパワーアップのため、歯止めはきかなかった。2017年夏の甲子園では48試合で68本塁打と史上最多記録を更新。今夏も履正社(大阪)が1回戦の霞ケ浦(茨城)戦で大会最多タイの5本塁打を記録するなど、金属バットの猛威はまったく衰えていない。
広がる低反発金属バットの併用
アメリカでは、2012年から大学野球、高校野球、リトルリーグで反発係数を木製バットと同レベルに調整したBBCOR(Batted Ball Coefficient of Restitution)仕様のバットを導入している。アメリカでも打球速度が上がったことによる負傷事故が相次ぎ、低反発のバットの導入が決まったのだ。
いまでは、アメリカのアマ野球ではBBCOR以外の金属バットは使用できない。ちなみに台湾や韓国の高校野球でも一部の大会を除き、木製バットを使用している。
実は日本のアマ野球の指導者の間でも、飛びすぎる金属バットの弊害は早くから指摘されていた。日本で高反発の金属バットを使用しているのは高校野球とボーイズなど中学硬式野球だけだ。大学、社会人、プロ、独立リーグはほとんどが木製バットだ。前述のように高校生が上のレベルに進んで、バットのギャップに苦しむ例が後をたたないため、指導者の中には有望な選手に高校時代から練習で木製バットを使わせることがしばしばあるのだ。
最近では履正社(大阪)の安田尚憲(現ロッテ)がそうだった。このコラムで紹介したことのある少年硬式野球チーム堺ビッグボーイズも、現西武の森友哉などの有望選手に中学時代から木製バットを使わせていた。
堺ビッグボーイズでは、昨年から同チームが主催するリーグ戦「フューチャーズリーグ」で、参加チームの同意を得て、アメリカで購入したBBCOR仕様の低反発金属バットの使用を開始した。
これによって、極端な打高投低が是正されたが、ほかにも収穫があった。投手は長打を打たれる心配が少なくなったので、思い切ってストライクゾーンに投げ込むことができるようになった。打撃戦も少なくなったので投手の球数が減った。低反発バットを導入すれば投手の負担が軽減されることは、拙著『球数制限』で複数の有識者が指摘しているが、まさにそれが実証されたのだ。
また打球速度が低下したことで、野手は打球を恐れることなく落ち着いて処理することができるようになった。「守備の基本をしっかり学ばせるうえでは、これは大事なこと」と堺ビッグボーイズの阪長友仁コーチは言う。
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