筆者はこの夏、東京と大阪で地方大会の1、2回戦を見た。強豪校が連合チームなど弱小校を相手に、打撃練習のようなワンサイドゲームをするのを何度か目にした。
今季の大阪府大会には茨田・淀川清流・東淀工・扇町総合・南と、5校もの連合チームが出場したが、こうしたチームでは週に1度、合同練習ができればいいほうだ。内野の連携などはほとんど練習できない。太っていたり、がりがりだったり、とても野球選手とは思えない体格の選手もいる。
シード制のない大阪府では、こうした寄せ集めチームが、甲子園を狙う強豪校と当たることもある。強豪校の打者が金属バットで何気なく振り抜いた打球は、鍛えていない弱小校の選手にとっては十分に「凶器」となりうる(来季から大阪府大会もシード制にする話が進んでいるようだ)。
数年前から審判員などからこうした危険性を指摘する声は出ていた。しかし、取り組みはほとんど行われてこなかった。
今夏の金属バットによる事故は、もはや高校球児の打球の球速が、レッドゾーンに迫ろうとしていることを表している。実際に「球数制限」の取材を進める中で、「金属バットの見直し」が必要と訴える論者も複数いた。
弊害がはっきりし始めた高反発金属バット
筆者は昨年も『高校野球は「金属バット」でガラパゴス化する』(2018年09月12日配信)というタイトルで、金属バットの弊害を指摘した。昨今の甲子園では多くのホームランが出るが、それは反発係数の高い金属バットの恩恵であり、金属バットに慣れた日本の高校球児が、木製バットで行われる国際大会や、大学野球、プロ野球、独立リーグなどの試合に出れば、大きなハンデを背負ってしまうことを問題視した。
しかしそれ以上に「飛びすぎる金属バット」は選手を深刻なケガの危険にさらすという問題をはらんでいるのだ。
もともと金属バットは、高価なうえに試合や練習でも頻繁に折れる消耗品だった木製バットの代替品として、経費削減を目的に導入された。日本の高校野球では1974年夏から導入されている。この動きは世界共通で、多くの国のアマチュア野球がこの時期に金属バットになった。
しかし、木製バットよりも反発係数が高い金属バットの導入で、高校野球は打高投低が急速に進行した。清原和博の甲子園最多13本塁打も金属バットの時代になって達成されたものだ。
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