「球数制限」議論が必要な高校野球の危うい未来

投手の酷使を絶賛する時代はとうに終わった

夏の甲子園への注目が集まっていますが、投手の酷使は依然として問題です(写真:s_fukumura/PIXTA)

筆者は「野球の未来」をテーマにコラムを足掛け2年以上執筆してきた。拙著『球数制限』は、問題意識を集約させた1冊でもある。

「1年経ったら“球数制限”なんてみんな忘れて、甲子園で大騒ぎしてるよ」

金足農業高校(秋田)の吉田輝星投手(現・日本ハムファイターズ)の連投が大きな影響を与えた夏の高校野球100回大会が終わった後、筆者の知人はこう言ったが、そうはならなかった。

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「球数制限」を巡る議論は、秋になっても収まらず、2018年12月には新潟県高野連が2019年4月の県大会で100球の「球数制限」の導入を決定。これに日本高野連が待ったをかける。

年が明けて2月には全日本軟式野球連盟(全軟連)が、今年度から学童野球に「70球」の球数制限を導入することを決定。さらに4月から主として「球数制限」をテーマとして、日本高野連が「投手の障害予防に関する有識者会議」を設置。今年11月には提言をまとめるという。

賛否の意見が数多く発信されたが、これらを通じて筆者が感じたのは「情報の非対称」だった。

なぜ「球数制限」議論はかみ合わないのか

「球数制限」に慎重な意見、反対意見を発する人の多くは自身の経験や一般論、観念論で話していた。医学的な知識に乏しい印象を受けた。また限定的な範囲しか見ていない意見も多かった。

一方で、導入に肯定的な人の多くは、この問題の医学的側面を理解していた。また他のスポーツと比較しての野球の特異さや、世界のスポーツの趨勢と比較しての違和感を訴える人も多かった。否定的な意見の人と、肯定的な意見の人では、情報量も視点も大きく異なっている。だから議論がかみ合わないのだ。

そこで「球数制限」の議論に資する意見や情報を集成したものをつくろうと思い立った。「有識者会議」の発足が発表された3月末のことだった。そこから実質2カ月強で資料を集め、関係者、識者に取材をし、本をまとめた。慌ただしい中で新しい発見があった。

1.「球数制限」問題は30年近く前に解決していた可能性があること

よく知られているように、甲子園の高校野球にメディカルチェックが導入されたのは、1991年夏の大会で、沖縄水産高校の大野倫が故障を押して投げて右腕を疲労骨折したのがきっかけだ。時の日本高野連会長、牧野直隆はこれを深刻な問題と受け止め、1994年から甲子園大会前の投手の肩、ひじの検診を実施した。それ以降、指導者がノースローの期間を設けるなど、投手の健康問題では一定の進歩があったのは事実だ。

しかし牧野会長は、これにとどまらず、この件を機に、エースが1人で投げまくる日本野球の古い習慣を見直そうとしていた。メディカルチェックの前に全国で実施された「指導者講習会」では、球数や登板間隔まで具体的な数字が示されていたのである。

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