高校野球で飛びすぎる金属バットの危険な側面 「飛ばない」バットが未来を拓く

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さらに、打者もしっかり球を引きつけて振り抜くようになった。甲子園では泳ぐようなスイングでもホームランが出ている。高反発でスイートスポットが広い金属バットでは、スイングスピードさえ速ければ少々フォームが崩れても打球は飛ぶのだ。

国産の低反発金属バットIp Select『Atarer~アトラエール~』が今年の8月から販売開始されている(写真:プロスペクト提供)

しかし木製バット同様のBBCOR仕様のバットでは、ボールをしっかり引きつけないと打球は飛ばないのだ。

もちろん、このバットの導入によって打球が当たって負傷するリスクも軽減された。

「低反発金属バットの使用をお願いした指導者の方々は、最初は戸惑いがあったようですが、今では“打撃の基本が身につく”と評価してもらっています」堺ビッグボーイズの瀬野竜之介代表は言う。

BBCOR仕様のバットは、国内メーカーは製造していないが新しい動きがあった。

Ip Select『Atarer~アトラエール~』の試作品を手にする阪長友仁氏(筆者撮影)

この8月、堺ビッグボーイズをスポンサードするプロスペクト株式会社は、アメリカから輸入する形でBBCORの製造ライセンスを取得し、国産の低反発金属バットIp Select『Atarer~アトラエール~』の販売を開始した。

企業としては、国際的な野球の趨勢を考えれば低反発バットの導入は不可避だ、という判断による「ニーズの先取り」という意味合いがある。

「大人の事情」が優先されることがあってはならない

今夏は、NHKの高校野球中継でも「金属バットの打球が速すぎて危ない」と話す解説者がいた。専門家もそういう危機感を持ち始めているが、残念なことに新聞、テレビなどメディアは「金属バットの弊害」に言及する記事は極めて少ない。

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「低反発金属バットの導入」は、打球速度が低下することで強豪校と公立など一般校の格差の是正が期待できる。そしてもちろんケガのリスクを低減できる。国際大会や上のレベルの野球とのギャップも埋まる。コスト面での負担は一時的に増えることを除けば大きなデメリットはないだろう。

しかしこの問題もなかなか議論が進まない。

メディアや主催者側にとってみれば「低反発金属バットになれば、甲子園のホームランが激減して人気に陰りが出る」ことへの懸念や、「今大会第何号」と景気のいい報道ができなくなることも考えられる。そんな「大人の事情」が仮にあったとしても、「高校球児の健康、未来」に優先されることがあってはならない。「球数制限」と並行して、低反発金属バットの導入を、ぜひ真剣に議論してもらいたい。

(文中一部敬称略)

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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