婦人科系の病気は年齢を重ねるごとに増えるとはいえ、20代でも安心できない。小泉典子さん(仮名、44歳)が、子宮内膜症の一種であるチョコレート嚢胞があると発覚したのは25歳のとき。こちらも会社の定期検診のときだった。
子宮内膜症とは、本来子宮の内側にだけあるはずの子宮内膜が、卵巣や子宮と臓器をつなぐくぼみなど、子宮の内側以外の場所にできてしまう病気。生理のたびに増殖や出血を繰り返し、周辺組織と癒着を起こして、さまざまな弊害をもたらす。
代表的な症状は、痛みと不妊だ。生理のある女性の数%~10%にみられ、原因不明の不妊患者の約半数に子宮内膜症があると言われている。なかでも、卵巣にできる内膜症は、卵巣に血がたまった経血がどろどろしたチョコレートのようになることから「チョコレート嚢胞」と呼ばれる。
結婚と同時に不妊治療スタート
「チョコレート嚢胞は大きくなると破裂すると言われましたが、当時はまだ結婚していなかったし、そこまで大きくなかったので、定期的にチェックすることになりました。ただ、そのときすでにチョコレート嚢胞があると妊娠しづらいことを説明されました」
その後30歳で結婚。すぐに子どもが欲しかったので、結婚と同時に不妊治療を開始した。
「結婚前から妊娠しづらいということがわかっていたので、夫も協力的。最初から納得して治療をスタートできました」
まずはタイミング法からはじめ、人工授精にステップアップ。
当時、PR会社に勤めていたが「大きな案件を抱えているときや、プレゼンが入ると深夜残業は当たり前。今にして思うと、妊娠に備える環境でありませんでした」。忙しいとどうしても通えない月が出てくるため、治療も断続的になりがち。そこで、32歳のときに思い切ってフリーランスに転身。治療にも本腰を入れるため、チョコレート嚢胞の手術を念頭に大きい病院に転院した。
転院後、卵巣だけかと思っていた子宮内膜症が、ほかの場所にも点在していたことが発覚。そのため、癒着しているところをすべて取り除く必要があった。
「私は生理痛がそれほどひどくなかったので、まさか内膜症がほかにも広がっているとは思ってもみませんでした」
きれいに内膜症を取り除いてもらい、卵管も通り、これで妊娠できると臨んだ人工授精はまたしても失敗。検査の結果、子宮内膜症の癒着に由来するキャッチアップ障害だとわかった。通常、卵巣から放出される卵子を卵管采がキャッチするが、癒着があるためそれがうまくできない。もう体外受精しかないと言われた。
体外受精をするにあたり、ほかの専門クリニックものぞいてみようと夫婦で説明会に参加。
「あるクリニックの説明会に参加したとき、参加者の多いことに驚きました。私の周りで不妊治療をしている人がいなかったので、こんなに治療を望んでいる人が多いのかと衝撃を受けて。
当時は排卵をいっぱいさせて、卵子を増産させているのが一般的だったにもかかわらず、そこは卵子の質を高め、1つを大事に育てる方針でした。その治療方針に共感したことと、ほかの患者さんの顔を見たことで、3度目の転院と体外受精の覚悟が決まりました」
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