子宮の病気抱え不妊治療した女性と家族の覚悟 25歳で発覚した子宮内膜症と向き合い治療

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「転院先の総合病院は、通勤経路からも外れ、職場から30分くらいかかる立地。専門クリニックだと早朝や夕方に診察してくれますが、総合病院の場合、受診は午前中と決まっているので、仕事のスケジュール調整をするしかありませんでした」

中島さんの病院では、体外で育てた受精卵をお腹に戻す胚移植には、自分の排卵周期に合わせた「自然周期」で戻す方法と、薬でホルモン値をコントロールして戻す「ホルモン補充周期」の2種類から選択できた。

自然周期のメリットは、自分の排卵時のホルモンを利用するので薬剤を使用する量が少ない点。一方、ホルモン補充周期は薬剤を用いることで胚移植の日程を希望に合わせて調整しやすいというメリットがあるという。

「外資系のため、自分の裁量でスケジュールは組みやすかったものの、それでもスケジュール調整は厳しかった。人事という職務柄、忙しい月はどうしても治療をスキップせざるをえず仕事優先。気持ち的にもリラックスして戻したいというのもあって、自分でスケジュールをコントロールできるホルモン補充を選びました」

流産を経験…

しかし、ホルモン補充周期の場合は毎日薬を飲まなければならないし、薬の副作用も出る。仕事優先で胚移植をしない月は、その分自分の年齢が進んでいくことがもどかしかった。

自分の裁量で仕事を調整できるとはいえ、半休はかさむ。そんななか、胚移植5回目で流産を経験。さすがに当時の男性上司に不妊治療を打ち明けた。女性も多く、理解のある会社だったが、プライベートなことをオープンにする雰囲気の職場ではない。

「ただ、趣味のサークルに不妊治療をしていた友人がいたんです。趣味自体が息抜きになるし、治療のことも何でも話せて、アドバイスをもらったり。それにすごく救われました。

あと、夫が協力的だったことも大きいですね。電車に乗るのもつらい日は、仕事を休んで送り迎えをしてくれたり、職場で不妊治療をしている女性から話を聞いて勉強してくれたり。むしろ、私の今の状況を話して情報収集もしてくれました」

その後も、自分でスケジュールを調整しながら、粛々と治療を続け8度目の移植で妊娠。42歳で第1子を無事出産した。

「私は生理不順でもなかったし、仕事も忙しくて、定期検診以外で婦人科に行ったことはありませんでした。あのとき子宮の病気が見つからなければ、そのまま筋腫にも気づかず『子ども、できないね』と言っていただけだったかもしれない」と7年前を振り返る。

「卵を戻すのに1回30万円、それ以外にも採卵、薬など、病院だけでも300万円以上。そのほか、週1回の鍼灸、サプリ、温活グッズなど、インターネットに書かれているいいと言われることは順番に試しました。費用は全額独身時代の貯金。夫には言っていませんでしたが、11個の卵を戻したら終わりにしようと、なんとなく自分の中では決めていました」

中島さんは8回目で妊娠したため、凍結卵子はあと3つ残っていた。そして、第2子妊娠を目指して、新たに3回目の胚移植。まさに今、中島さんのお腹の中でその卵が育っている。

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