「地域によってサポートの内容は違うと思いますが、多くの自治体は大々的に宣伝していないし、産院もわざわざ教えてくれません。『情報は自分で取りに行く』『利用できるものは利用する』そういう姿勢が大切だと思います」
三女を出産したとき、祖母は90歳。だんだん歩くことが難しくなり、外出は車椅子を使うように。季節の変わり目になると、風邪などから肺炎を起こし、入退院を繰り返していた。
「今思えば、祖母の入院時がいちばんつらかったですね。個室が空いていればいいのですが、空いてないと大部屋になります。大部屋だとインフルエンザなどの感染症がはやっている時期は、病室に子どもが入ることができないので、三女が生まれたばかりの頃はすごく困りました。
預け先が見つからず、ベビーカーに寝かせたままナースステーションに置かせてもらったこともあります。子育て中の介護者に対する行政のサポートや介護保険サービスがあればいいのにと思いました」
3人の子どもを抱えて病院に通う日が続く。日に日に悪くなっていく祖母を目の当たりにすると、つらい気持ちに押し潰されそうになることが多くなっていった。
「このままではいけない!」
「介護って、『いつまで続くんだろう』と考え始めると、行き詰まっていく感覚を持つ方は多いと思います。私もそうでした。自分のことはいちばん後回しで、子育てより介護を優先してきました。いつも何かに追い立てられているようで、1日があっという間に過ぎていくんです。ものすごくストレスがたまっていました」
ダブルケアはほかに家族がいたとしても、なぜか1人に負担が集中するケースが少なくない。小野さんも例外ではなく、「神様がこのつらさに耐えられる人を選んでるのかな?」と笑った。
時間的にも精神的にも余裕がないため、整理整頓ができず、家の中までが混沌としていた。買ってあるはずのオムツがない。病院へ行く時間なのに保険証がない。子どもの習い事の月謝袋がない。失敗すると自分を責め、さらに余裕がなくなっていく。
祖母はできないことが増えてきた。三女は歩くようになった。長女の学校行事や地域の仕事にも参加しなければならない。
「このままではいけない!と思いました。私はこの家のダブルケアのキーパーソン。私が元気で明るく楽しくいなければ、祖母や子どもたちが幸せでいられるはずがない。いちばんケアしなきゃいけないのは、自分自身だと気づいたんです」
小野さんは、「まずはいちばん長い時間を過ごすわが家を快適にしよう!」と思い、夫の協力のもと、家の中にある要らないものをどんどん処分し始める。
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