谷中のお寺が「幽霊イベント」を開催するワケ 漫画をきっかけに落語の人気が高まっている

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平井住職によると、3000円のチケットの販売開始後、3時間で定員の100人分が売り切れ、追加で20人を募集したそうだ。

トークセッションでは、雲田氏が落語をテーマにした理由を説明したほか、実際の落語界と比べての感想が馬玉氏によって語られた。

馬玉氏が「よくできている、昔の寄席の雰囲気などがよく出ていて、私自身落語家として勉強になる。登場人物が色っぽく、とくに男がいい。手足が長くてイケメン。実際の落語家はどちらかというと手足が短いが(笑)」と感想を述べたところ、雲田氏は「私としては、落語家は格好いいし色っぽいと感じる。落語家のそういう部分を描きたかった」と答えた。

また、全生庵が所有する伝円山応挙作の幽霊画は、実は作品の中にも登場しているなど、漫画読者にとっては豆知識的な気づきもあった。

なお、「見に来たことはあるか?」との住職からの質問に、「それがなくて、想像で描いている」と雲田氏の返答があり、会場が笑いに沸いた。

読むだけで落語のよさがわかる漫画に

また馬玉氏は、落語の中に出てくる幽霊の多くは怖くない存在であることについて、「昔は幽霊や死というものが近しい存在だったから、おどろおどろしくないものとして描かれた」と分析。

住職の平井正修氏。全生庵では座禅会や写経会も定期的に開催。「スマホの影響で、心穏やかになる機会が日常から減っている。遠くから座禅に来られる方も増えています」とのこと(筆者撮影)

雲田氏も「(落語に幽霊を呼び出すものとして出てくる)反魂香や線香など、煙はあの世とこの夜をつなぐもの。作品の中にも使った。ネタバレになってしまうが、作品の中であの世を楽しいところとして描いている。これも落語の「亡者の戯れ」(地獄八景亡者戯)から着想した。

烏が鳴くと日が落ちる(落語の中での描写の仕方)とか、場面がポンと飛ぶところなど、読むだけで落語のよさがわかる漫画にしたかった」と語るなど、あの世、幽霊などについて落語と絡めながらのトークが繰り広げられ、作品のファン、落語ファンだけでなく、幽霊画や江戸の風俗に関心がある人など、さまざまな人にとって興味深い内容となった。

馬玉氏による「死神」は、氏の個性を反映してか、コミカルで明るい語り口。「サゲ」で主人公が命を落とす場面も、からりと仕上げた。

イベント後には、幽霊画の鑑賞会、雲田氏のサイン会が開催されたほか、馬玉氏と参加者が直接語り合える席もセッティングされた。

馬玉氏が気軽に「どこから来たの?」などと接する一方で、参加者からは、どのようにして落語家になるのかや、落語家のしきたりなど、さまざまな質問が寄せられた。都内だけでなく、山梨、宮城、大阪など、遠方から訪れた参加者も多く見受けられた。

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