谷中のお寺が「幽霊イベント」を開催するワケ 漫画をきっかけに落語の人気が高まっている

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若い女性だけでなく幅広い読者の支持を受け、アニメ化、ドラマ化などと相まって、落語人気の高まりのきっかけの1つともなった。講談社漫画賞一般部門、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、手塚治虫文化賞新生賞など輝かしい受賞歴を持つ。

雲田はるこ氏による漫画「昭和元禄落語心中」(筆者撮影)

同作品の重要なモチーフとなっているのが、圓朝創作による落語の1つ「死神」だ。落語には幽霊が出てくる作品はよくあるが、その多くはあまり怖くない。

しかし「死神」に関しては、話し方によっては寒気のするような怖さがある。作品に主人公の師匠として登場する「八雲」の十八番が「死神」で、八雲はどちらかと言えば、恐ろしく語るタイプ。

圓朝はこの作品のほかにも、「牡丹灯籠」「真景累ヶ淵」といった怖い怪談話を創作した「落語中興の祖」だ。

ユニークな経歴を持つ人物でもある。まず、落語家としての道に進む前は、猫好き絵師としても知られる、歌川国芳の下で修行したことがある。また幕末の無血開城に尽力し、後に明治天皇の侍従を務めた山岡鉄舟に弟子として仕え、禅を学んだ。

所蔵品の中には、圓朝の筆によるどくろの画も

そして、全生庵が所蔵する幽霊画を集めたのも圓朝だ。寺が所有するのは圓朝収集による幽霊画のおよそ半数。所蔵品の中には、圓朝の筆によるどくろの画も存在する。

こう見てくると、圓朝自身、漫画の主人公となってもよさそうだ。

圓朝が幽霊画を集め始めた理由ははっきりしないが、全生庵住職の平井正修氏は、「圓朝が柳橋の料亭で催した怪談会の後、百物語にちなみ、集めはじめたともいわれます」と説明している。

このように、全生庵は落語との縁がことのほか深いお寺であり、檀家や一般の人を対象に落語会を開催することも多い。

トークと落語を組み合わせたイベントには、女性を中心としたおよそ120名が参加(筆者撮影)

そして今回のイベントは、雲田氏、落語家の金原亭馬玉氏、住職の3者によるトークセッションの後、馬玉氏による「死神」が語られる、「落語心中」ファンにとっては震えのくるような機会だった。さらに、一般来場者には午後5時までしか公開していない幽霊画を、イベント後の午後6時以降に鑑賞できる。

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