アメリカ保守が「建国の父」を自己批判した理由

リベラリズムが「格差拡大、国民分断」を生む

リベラリズムは自己抑制を旨とする社会規範を、また相互調整によって成り立つ中間的共同体を、「個人の自由に対する制約」と捉え、これを破壊しようとする。「だからリベラリズムとは反文化(アンチ・カルチャー)であり、アンチ・リベラルアーツなのだ」と著者は言うのである。

アメリカでも日本でも近年、大学ではリベラルアーツを縮小し、会計学やプログラミングのような、より実用的な科目に比重を置くようになっている。その根底には上記の自由の捉え方の変化がある。「個人の欲望を充足するうえで妨げとなる拘束を取り払っていくことが自由である」と考えられるようになると、リベラルアーツは不要な文化的・伝統的な拘束として退けられ、欲望充足のための実用的な知識が重視されるようになるのである。

リベラリズム型個人主義が蔓延した結果、社会は欲望を追求する個人の集合体となった。共通の社会的規範が失われたことで、自律的な秩序形成は困難になり、かつては文化が担っていた秩序形成作業をすべて、権力機関が代行しなければならなくなった。

結果、維持すべき秩序を明文化した法律が社会全面に張り巡らされ、権力に裏打ちされた執行機関がその遵守を人々に強制するようになった。かくしてリバイアサン的な強権国家が誕生する。

「一般的には個人主義と国家主義は対立するものだと見られているが、実は個人主義化が進めば進むほど、社会は国家主義的になっていく。個人主義と国家主義は互いに手に手を取り合って、近代社会を形成してきた」と著者は主張する。

科学技術の発達と自由の喪失

著者によれば、ヨーロッパでもかつては人間と自然はつながっており、人は自然界の一部であると考えられていた。しかし、近代以降、自然環境は人間の自由を束縛する拘束とみなされるようになり、人間と自然のつながりを切り離し、科学技術を通じて自然をコントロールし、自然環境の制約を脱することが科学の目的となっていった。

さらに現代では科学技術の進歩は所与の条件と捉えられ、人間はそれを制御できないと思われるようになっている。

著者は宗教的信条のため科学技術と距離を置くアーミッシュの生活スタイルを取り上げ、「人間は本来、どの科学技術を取り入れ、どれを取り入れないかを自ら決めていくべきなのに、その判断を放棄している」とする。

アーミッシュは例えば保険制度を取り入れない。なぜなら共同体内部の相互扶助こそが共同体の絆であるため、保険という匿名の相互扶助システムは共同体を害するものだと考え、取り入れないのだという。

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