「結論ありき」でこそ民主主義が機能する理由

「不純なリベラリズム」が共同体維持を守る

過激化していくリベラリズムに、少なからず影響を受けているアメリカの現状とは?(写真:Choreograph/iStock)  
内外で議論の最先端となっている文献を基点として、これから世界で起きること、すでに起こっているにもかかわらず日本ではまだ認識が薄いテーマを、気鋭の論客が読み解き、議論する「令和の新教養」シリーズ。
前回、政治学者で九州大学大学院准教授の施光恒氏が、『Why Liberalism Failed』(パトリック・J・デニーン著)を基に、アメリカのリベラリズムをめぐる現状を論じた。今回は、同氏と中野剛志(評論家)、佐藤健志(評論家・作家)、柴山桂太(京都大学大学院准教授)の気鋭の論客4人が、同書をめぐって徹底討議する。

アメリカ建国時のフェデラリズム論争

佐藤健志(以下、佐藤):近代国家の核心にあるのは、実は前近代的なもの、というのが『Why Liberalism Failed』の面白さだと思いました。やはり最近、話題になっている『The Virtue of Nationalism』(ナショナリズムの美徳)という書籍との共通性を感じますね。これを書いたヨラム・ハゾニーは、政治理論の博士号を持つイスラエル人ですが、ユダヤ人国家のあり方を論じる一方、旧約聖書の哲学についても著書を出しているんです。

これから世界で起きること、すでに起こっているにもかかわらず日本ではまだ認識が薄いテーマを、気鋭の論客が読み解き、議論します。この連載の記事一覧はこちら

施光恒(以下、施):デニーンはフランス革命を否定したエドマンド・バークの保守思想や、キリスト教の伝統文化を高く評価し、逆に社会契約論についてはほぼ全否定という立場です。

中野剛志(以下、中野):本書の主張は基本的には共和主義(リパブリカニズム=共同体の所属する各員が市民としての徳を身につけたうえで、共同体の統治を自ら行っていくべしという政治思想)だと感じますね。共和主義を強調したハンナ・アーレントの場合は、「アメリカは建国したときはよかったのに、歴史とともに歪んでしまった」という立場でした。

リベラリズム(自由主義)がいきすぎると、共和主義の原点に回帰しようとする。アメリカ思想界の歴史的パターンですね。

:デニーンの場合、建国期についてもあまり評価していないんです。「アメリカは建国の理念からしてリベラリズムに影響されており、立ち返るべきは建国の思想ではなく、建国当時の生活実践である」と述べている。建国の理念やフェデラリズム(連邦主義)まで強く批判しています。

柴山桂太(以下、柴山):僕は建国当時のアメリカの思想家の中では、合衆国憲法を書いたフェデラリストのジェームズ・マディソンとアレクサンダー・ハミルトンが、やはり優れていたように感じます。著者の目から見てフェデラリズムは何がよくなかったんでしょうか。

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