2018年10月19日の筆者コラム『AIに日銀・政策委員の発言を分析させてみた』では、日本銀行の政策委員9人の講演テキスト(2017年1月~18年9月)を学習データとした機械学習モデルを作成し、あるテキストの中での発言が誰によるものかを予測することが可能か、という検証を行った。
その結果、正答率は約52%となり、完全にランダムに予想した場合の正答率である約11.1%(=1/9)から大きく向上することが示された。日本銀行から発言者が匿名のまま公表される「金融政策決定会合における主な意見」や「金融政策決定会合議事要旨」の発言者予測などでAI・機械学習による「BOJウォッチ」は、大きな可能性を秘めている。
今回は、同様の方法で機械学習モデルをアップデートし、8月7日に公表された「主な意見」(7月29-30日開催の政策決定会合の分)の発言者分類を行った。
また、2016年以降の「主な意見」において、誰の発言に近い文章が多かったのかを時系列で示した。その結果、リフレ派とされる原田泰委員・片岡剛士委員のコメント率が増えた後の決定会合では、金融政策が緩和的に変化する可能性があることが分かった。
予測のカギとなる原田委員の発言
各委員の講演テキストにはそれぞれの考えや主張が反映されている。したがって、講演テキストを学習データとして機械学習モデルを作成することによって、さまざまな文章がどの委員の発言に近いかを分類する「分類器」を作ることができる。筆者は、各政策委員の講演テキストをセンテンスごとに切り分け、それぞれのセンテンスが誰の発言であるかを学習した機械学習モデルを作成した(学習方法はRandom Forestによる教師あり学習)。
それぞれの委員の予測精度によると、原田審議委員(正答率89.7%)の発言の分類は比較的容易であることが分かった。原田審議委員は全体の総意とは異なる発言が多いようである。一方、雨宮正佳副総裁と若田部昌澄副総裁の正答率についてはかなり低い結果となった。これは、講演の機会が多い黒田東彦総裁と比較して、そもそもの学習データが少ない上に、執行部として「公式見解」を述べる機会が多いため、両副総裁の個人的な見解を学習することが困難だったことが原因とみられる。
モデルのパフォーマンス向上のためには、やはり各委員の特徴語などを重点的に抽出する作業が必要となりそうだ。
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