機械学習によって作成した「分類器」を7月29‐30日の「主な意見」に適用し、発言者を予測した。
たとえば、個別の意見のうち、経済情勢に関する「わが国でも、製造業中心に新規求人が減るなど、輸出や業況感の悪化が、堅調とされる雇用の先行きに影響し始めている」については、布野幸利委員によるものと分類された。布野委員はトヨタ自動車出身のため、製造業に関し意見が採用されている可能性はある。また、「海外経済の減速に加えて、消費税率引き上げの影響等に注意が必要である」という意見についてはリフレ派の片岡委員と判断された。おそらく「消費税率」というワードによって分類されたのだろう。
金融政策運営に関する意見については、追加緩和に対する積極的な意見が注目された。たとえば、「現時点において、物価の下振れリスクに対して予防的・先制的に政策対応することが重要である。長短金利操作とフォワードガイダンスの両面から金融緩和を一段と強化することが必要である」というものは黒田総裁もしくは櫻井眞委員と分類器は判断した。
「米中貿易摩擦の影響を受けやすく、2%から距離のある日本こそ、経済・物価の下振れリスクに対する、いわゆる予防的金融緩和論を検討する必要があるのではないか。消費税率引き上げの影響や市場の急変などに対して、日本銀行の政策が後手に回らないよう十分な警戒が必要である」という発言は黒田総裁もしくは原田委員の意見であるとされた。原田委員はリフレ派なので、この選択は違和感のない結果である。
黒田総裁の発言とされる部分は多くなる
なお、日銀によると「金融政策決定会合における主な意見」は、(1)各政策委員および政府出席者が、金融政策決定会合で表明した意見について、発言者自身で一定の文字数以内に要約し、議長である総裁に提出する、(2)議長はこれを自身の責任において項目ごとに編集する、というプロセスで作成されたものである。
したがって、「主な意見」のコメントはさまざまな委員からある程度は均等に選ばれているとみられる。しかし、当レポートで用いた機械学習モデルで作成した分類器は黒田総裁を選択するケースが多くなった。
これは、①日銀の「公式見解」とみられる意見については学習データが相対的に多い黒田総裁に分類される可能性が高いこと、②「主な意見」の作成手順として「議長はこれ(各委員の意見)を自身の責任において項目ごとに編集する」とされており、各委員の意見は議長である黒田総裁が編集することになっている。そのため、黒田総裁特有の言い回しなどが使われやすくなっていること、などが理由として考えられる。
また、前述したように、雨宮副総裁や若田部副総裁については分類が苦手とされるモデルであり、相対的に両副総裁の意見が予測されにくい。これらの要因により、比較的分類が容易な黒田総裁や原田委員が多く予測されている点には留意が必要である。
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