「たばこのリスク」を甘く見る人が超危険な理由 「常に陸で溺れているような」症状出る場合も

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また、受動喫煙の害についても触れておきましょう。たばこの煙を直接吸い込む「能動喫煙」だけでなく、他人のたばこの煙を吸い込む「受動喫煙」でも肺がんや脳血管障害や虚血性心疾患のリスクが上がります。受動喫煙曝露割合と受動喫煙による各疾患リスクから計算すると、日本では受動喫煙が原因で年間に約1万5000人が死亡しているという試算もあります(※4 「たばこ対策の健康影響および経済影響の包括的評価に関する研究」厚生労働省)。受動喫煙も避けてください。

念のために申し添えますが、他人に迷惑をかけないのであれば、リスクを承知のうえでたばこを吸う自由はあるべきだと私は思います。健康や長寿を望むのは、価値観の1つにすぎません。「健康を損なってもいい」「早死にしてもいいからたばこを吸いたい」という価値観も尊重します。

過小評価できない「喫煙のリスク」

患者さんにはなるべく健康で長生きしてもらいたいので、私はたばこを吸っている患者さんには禁煙をすすめます。ですが、害を承知で吸っていて、たばこをやめる気がない患者さんに禁煙を強要することはありません。「もしも禁煙する気になったら、禁煙外来という方法もありますからね」という情報提供はします。

『医師が教える 最善の健康法』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

気になるのは、たばこを吸っている人の一部に喫煙のリスクを過小評価している人が見受けられることです。「禁煙ファシズムと戦う」などと喫煙の自由を求める人もいますが、こうした運動において「たばこにはそれほど害はない」という間違った主張が行われることがあります。能動喫煙や受動喫煙の害は、実証された医学的事実です。喫煙するなら、その害から目をそらさずに正面から向き合うべきでしょう。

「たばこにはそれほど害はない」といううそを信じたがっている人が一定数いるため、週刊誌の売り上げやウェブサイトのアクセス数を稼ぐことを目的として、そうしたうそが提供されます。

信じると命を失うこともあるという点で、インチキ治療と同じくらい悪質なうそです。そうしたうそにだまされて、いざ肺がんや慢性閉塞性肺疾患にかかったときに「こんなはずじゃなかった」と後悔することのないようにしましょう。

名取 宏 内科医

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なとり ひろむ / Hiromu Natori

大学病院勤務、大学院を経て、現在は市中病院に勤務。診療の傍ら、主にインターネット上で「科学」と「ニセ科学」についての情報を発信している。著書に『新装版 「ニセ医学」に騙されないために』(内外出版社)がある。BLOG:NATROMのブログ

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