「圧倒的権力者」親たちが犯すとんでもない失敗

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親は子どもを侮っています。でも、私の長年にわたる教師として経験で言わせてもらえば、子どもは決して侮れない存在です。何もわかっていないように見えますが、実は大人たちの行動をしっかり見ていて、無意識のうちに相手に対する的確な評価をしています。上司が部下を評価するより的確です。

子どもを侮っていると、子どもからも侮られるようになり、子どもをリスペクトしていれば、子どもからも同じリスペクトが返ってきます。子どもには、大人の真の姿を見抜く力が備わっているのです。それは、弱い存在が生き延びるための本能的な能力なのかもしれません。

あるいは、今はやりの言葉で比喩的に言えば、子どもはビッグデータのようなものを活用しているのではないかとさえ思えます。

それはこういうことです。例えば、親がひどい言葉で叱りつけても、翌日には子どもはけろっとしていたりすることがよくあります。こういうことが毎日よく起こるわけで、子どもは親の一つひとつの行動や言葉を覚えていないように見えます。

でも、人間はそんなに単純ではなく、もちろん、意識的に引き出せる記憶としては残らないかもしれませんが、子どもの無意識層にデータとして蓄積されて、何年も経つうちにそれはビッグデータのようなものになる、ということがあるのではないでしょうか。

そして、そのビッグデータが、子どもに「この大人はこういう人だから、このように扱うべし」と教えてくれる……。これは比喩的な表現ですが、こういったことはあるのではないでしょうか。

子どもを1人の人間としてリスペクトすべき理由

このことを私が痛烈に感じた出来事があります。それは私が教師をしていた頃のことです。ある日の休み時間に、私は4人の子どもたちのおしゃべりを聞いていました。4人とも同じ団地の子で、いつも一緒に遊んでいるので話題は遊びのことでした。次に、話題がそれぞれの母親の噂話になり、誰にお菓子を出してもらったとか、仕事を手伝わされたりとか、片付けのことを注意されたりなど、いろいろな話が出ました。

そして、A君が「B君のお母さんが言うと、なんだか聞かなきゃって感じするよね」と言いました。すると、それを聞いたほかの子たちが「そう、そう」「なんだか、そうしようっていう気になるよね」と同意しました。次に、C君が「おれっちの母さんだと、なんだか別にどうでもいいやって気にならない?」と言いました。すると、ほかの子たちが「うん……、そんな感じがするかも」と同意しました。

子どもたちの会話に出てきたB君のお母さんというのは、どういう人だと思いますか? 子どもたちが言うことを聞くということで、とても怖いお母さんなのかと思うかもしれません。でも、実はまったくその反対で、とても穏やかで優しいお母さんなのです。では、子どもたちがあまり言うことを聞く気になれないというC君のお母さんは、どういう人だと思いますか?

もうおわかりだと思いますが、とても感情的な人で、子どもたちにも平気でひどい言葉をぶつける人です。C君もよく大きな声で叱られていましたし、一緒に遊んでいる子どもたちも、「また、片付けてない! あなたたちは、何回同じことを言われればできるの!?」といったひどい言葉でよく叱られていました。B君のお母さんは、決してこのような言い方はしません。

さらに聞いていると、どうやら4人のお母さんたちについて、子どもたちは心の中で無意識のうちにランク付けをしているらしいということに気づきました。

B君のお母さんが1位で、続いて、A君、D君、C君のお母さんという順位のようでした。これは、子どもたちの話を聞いているうちに私が気づいたということであり、その子たちは気づいてはいないのです。自分たちで気づいてはいないのに、4人の心の中にまったく同じ順位のランク付けがあるのです。これには私も驚きました。

このように、子どもは侮れない存在です。すべての親は、自分が圧倒的な権力者であることを自覚し、1人の人間としてのあり方に立ち返ってほしいと思います。

そして、子どもを1人の人間としてリスペクトしてください。「この言葉は大人同士でも言える言葉なのか?」というのが1つの基準になります。大人同士ではとても言えないようなひどい言葉は、子どもにも言ってはいけないのです。

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