ドラマの企画プロデューサーであるエイベックス・ピクチャーズの原祐樹氏は同書をはじめて読んだとき、「この平和な現代日本で、犯罪に手を染めなければいけないほどに追い詰められた若者たちが存在することに衝撃を受けたと同時に、一歩間違えたら自分もこの世界の住人になっていたんじゃないか」と思ったそうです。恐怖心すら抱いたのは、こんな理由もあったから。
「リーマンショック後の新卒切りや内定取り消しが騒がれた時期に、ちょうどエイベックスに入社しました。
幸い現実には起こらなかったものの、同時期に父親が末期がんで余命1年を宣告され、そのための治療費や大学に行くために借りた数百万円の奨学金も背負っていたので、もしエイベックスが新卒切りをしていたら? もし友人が儲かるアルバイトの話を紹介してきたら? 『やっていたかもしれない』と思ってしまったのです」(原氏)
ドラマをご覧になった方はこの告白からおわかりのように、ドラマの主人公、草野誠実は原プロデューサーがモデルです。実体験をベースに自ら脚本原案をしたため、企画を実現させていきました。
「振り込め詐欺・第3世代」が舞台
構想時の資料には詐欺業界の歴史を独自でまとめた年表もあったと言います。その一部を見せてもらうと、2013年を舞台にした全9話の今回の設定は「振り込め詐欺・第3世代」として描いていることがわかりました。
「ベースのストーリーを作るために、どの時期を今回ドラマ化すべきか。それを考えるために『老人喰い』をはじめ、いろいろな本を参考にまとめていくと、ワイドショーなどで取り上げられ、よく知られている事件や法律の改正が、実は振り込め詐欺の手口の変遷とつながっていることまで見えてきました。詐欺の手口はみるみるうちに変わってもいて、今は『振り込め詐欺・第6世代』ぐらいだと認識しています」(原氏)
企画段階から、続編を見据えることが当たり前の海外ドラマの作りも意識して、年表にまとめたそうです。
企画の骨太さも証明することになり、構想から放送・配信まで2年の月日がかかるも、地上波深夜ドラマ×Netflix独占配信という両軸で展開させることに成功したわけです。
関西(毎週日曜24時50分~)と関東(毎週火曜25時28分~)のローカル放送に加えて、Netflixユーザーであれば、日本全国どこでも視聴可能です(Netflixは毎週水曜日に新着エピソード配信)。ネット全盛時代ならではのドラマの仕掛け方でもあります。
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